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光芒

2008年3月3日 新作
このお話は原作7巻直前のお話となります。

「よぅ!見舞に来てやったぜ」

背後から掛けられた声に聞き覚えがあった。


こんな癪に障る言い方は、あいつしかいねぇ・・・


顔に広がる渋面とは裏腹に、胸の内に広がっていく安堵にも似た感情。
ミネルバの壁面を一心不乱に磨き上げるタロスの腕が、ピタッと一瞬だけ止まる。
口の端が僅かに緩みかけるが、タロスはその動きを必死に押しとどめつつ、ドスの効いた声で凄みを利かせた。

「・・・見舞う相手を間違ってんじゃねぇか?」

言いながら重心を少し傾け、振り向きざまに低い位置からボディーブローを狙うが・・・
まんまと相手の術中に陥る。
片手一つでタロスのパンチをあっさり受け止めながら、フンと鼻を鳴らしてバードが毒づく。

「これはまた、手荒い歓迎ご苦労さん。だがパンチにいつもの切れがないですなぁ。ミネルバの補修ばっかりしてるから、相当身体が鈍っている御様子で」

してやったりとほくそ笑むバードに、タロスの口撃が炸裂する。

「用件がねぇなら、とっとと俺の目の前から消え失せろっ!」

怒鳴るタロスにバードは涼しい顔をして、しれっと憎まれ口を叩く。

「ジョウが入院中だから、お前さんが暇こいてるんじゃねぇかと心配してきてやったのに、案の定このザマだ。ま、ミネルバ位しかタロスの愚痴の聞き役はいねぇからしょうがねぇ。タロスから解放されるまでもう少しの辛抱だぞ、ミネルバ」

よしよしと言わんばかりに、さっきまでタロスが丹念に磨き上げていたミネルバの壁面を手で撫で付けるバードに、タロスは顔を真っ赤にしながら、吼えまくる。

「さっきから聞いてりゃ、好き勝手なことばかり言いやがって!てめぇの腹にライフルぶち込まれたくなかったら、俺の前から消えやがれっ!くそったれ!」

口では悪態を吐きまくるタロスではあるが、そっと盗み見た表情から、タロスが自分と言い合うことでストレスを発散していると知ったバードは、タロスにわざと釣られる事にした。

「今のうちにせいぜい軽口を叩いておくんだな。ジョウが退院したら、お前みたいな老いぼれは即お払い箱だ」
「チッ!俺よりも若いくせに、現役を退いて宇宙軍なんぞに転職した奴に言われたくねぇ」
「ほぉ〜!まだ現役を続行するつもりか?ジョウのチームで、たった一人だけ平均年齢を上げてる爺さんが」
「ぬぐぐぅ〜!!!」

バードの今の一言は、流石のタロスも相当堪えたらしい。
表面上は軽く受け流せる類の暴言も、こと年齢に関する事柄は事実に基づいている分だけタロスも認めざるを得ない訳で。

「・・・勝負あったな」

顔を真っ赤にして、口を一文字に結び、ブルブルと身を震わせながら黙りこくるタロスの右肩を、バードは軽くポンポンと叩きながら
タロスの耳元に小声で囁いた。

「ジョウの主治医にDrヌレエフが抜擢された。銀河系でもトップクラスの形成外科医だ。・・・クラッシャー評議会議長直々の御指名だそうだ」

・・・一瞬、タロスの思考が止まる。

「・・・おやっさんが!」

思考停止していた意識が、ある一つの事実に辿り着いた時、タロスの頭の中を電撃にも似た衝撃が駆け巡る。

ハッとして顔を上げた瞬間、傍らに佇んでいた筈のバードの姿は忽然と消えていた。

「・・・あいつ、わざわざ俺の為に・・・!格好つけやがって、大馬鹿野郎ッ!!」

タロスの叫びがミネルバが停泊しているドック内に力強くこだまする。
停滞していた意識の流れが、少しずつ動き出し始めた手応えを感じて、タロスの胸に一筋の光が差し込んだ。

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