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花散る里で

2003年4月3日 サイト初掲載作品

足元に広がる薄紅色の小波は、永久に続く幾重もの想いを練りこんだまま、穏やかな時間の中に溶け込んでいく。
覆い被さる枝の隙間から漏れる柔らかな光の帯は、透明な色を滲ませながら風に流されていく。

風に舞う薄紅色の花びらは、過ぎ行く季節の足跡を心に遺しつつ、優雅で華麗な一瞬の煌きを放って静かに地面に身を横たえる。
儚い命の移ろいをその一瞬に掛けて潔く散っていく桜に・・・
己の運命とダブらせている自分に気がつき始めたのは何時からだったのだろう?

突風に煽られて一斉に舞い上がる桜の花びらの幻想的な乱舞の中で、立ち竦んでいるだけの自分にかかる声。

「・・・運命に逆らってみるのも・・・悪くはないはずだぜ」

舞い散る桜吹雪の中で静かに呟いたアイツは、決意を込めた瞳で俺の瞳を射抜いた。
日頃のふてぶてしいまでの態度とは裏腹に繊細な想いが宿っている口調は、アイツの俺たち仲間に対する真摯な想いに包まれていた。

アイツはたぶん気づいているのだろう。
・・・潔く散っていく桜の花の気高さと凛々しさ、そして散り際の美しさに似せて、俺がこれからの自分の運命をダブらせようとしていることを。

・・・だからアイツは・・・

俺に対して挑むような目付きの中に、アイツの脆く崩れそうな心の欠片が散りばめられていた。
誰よりも強がってるくせに、その実誰よりも仲間想いで繊細な心を持つ、アイツのぶっきらぼうな思い遣りに俺たち仲間は何度となく救われてきたはずだった。

硬く凍てついた心の氷が、緩やかに融けだすような感覚。
暗く閉ざされた道に差し込んだ青白い月の光。
澱んだまま停滞していた空気を少しずつ送り出す緩やかな風。

・・・相変わらずお節介な奴だぜ、まったく・・・

黙り込んだままアイツから視線を外すと、小さく笑いながら澄み切った空を見上げた。
蒼く・・・どこまでも蒼い空の向こうで俺を見つめているはずの優しい面影が浮かぶ。
まるで何もかも分かっているかのように穏やかに微笑む幻は、春の陽光の中に溶け込んでいった。

ジャケットの内ポケットからタバコの箱をとりだすと、棒立ちになっているアイツの眼前に無造作に差し出す。

「・・・俺が運命に逆らっていけるかどうか・・・最期までしっかりと見届けろよ。・・・ただし途中で音を上げてギブアップするのは俺が承知しないからな!」

ハッとした表情で俺を見つめるアイツの顔が徐々に綻んでいく。
タバコを掴んだ指先が小刻みに震えているのを知りつつ、アイツは胸の奥から絞り出したような掠れた声で憎まれ口をたたいた。

「・・・そっちこそ、俺が見ている前でいきなり尻尾巻いて逃げ出すなよ!」

同時に吐き出したタバコの煙の中に込められている、揺ぎ無い信頼の絆がお互いの胸に染みとおっていく。
後から後から舞い落ちる薄紅色の花びらの渦の中にそっと身を委ねつつ、零れ落ちる光の雫の中で手探りで見つけ出す明日への扉へと向かう道しるべ。

・・・そう、俺たちはこれからも・・・運命に逆らいながら・・・
・・・生きて・・・生きて・・・生き抜いていく!

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