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めぐりゆく気持ち

2003年5月4日 サイト初掲載作品

009&002メイン

蒼く・・・どこまでも蒼い海の底に・・・

尽きぬことのない哀しみを閉じ込めてしまえたら・・・

こんなにも苦しまずにすむのに・・・

・・・僕は全てを受け容れられるほど・・・

強くないんだ・・・強くは・・・ないんだ・・・

***************

「よぉ!こんな所で何やってたんだ!?」

静かに佇む闇の静寂を破るように、緩やかな風に乗って届いた声が
虚空の世界の中に入り込もうとしていた僕を、強引に現実に引き戻す。
とりとめもない夢想を一瞬にして遮られた不満をぶつけるように、
声の主に向かって黙ったまま横目で睨みかえす僕。

「ふっ。・・・お前、反抗するのだけは一人前なんだな!
粋がってても無駄だから、もういい加減俺達に対して心を閉ざすのは止せ!」

まるで僕の頑なな心を全てお見通しのような男の言葉に、全神経がピリピリと逆立つ。

「・・・余計なお節介は止してくれないか?君達に対して心を開くのも閉ざすのも僕の勝手なはずだ」

刺々しい言葉の羅列をわざと男にぶつけつつ、張り詰めた心の周りに眼に見えない防御線を固く張り巡らせる。

・・・そうすることで、苦しく切なかった子供時代を必死に生き抜くしかなかった、
ちっぽけな・・・ちっぽけな『孤立』という名のささやかな僕のプライド。

「・・・お前さぁ・・・肩肘張って必死になって今まで生きてきたのはわかるけどよぉ・・・
もっと俺達に対してはさ・・・何ていうかこぅ・・・もっと素直になってみろよ」

ピチッ・・・!

今まで我慢に我慢を重ねて耐えていた心の決壊が、彼の一言で一気に崩れ落ちていく。
彼が発した僕に対しての最大級の侮辱が、怒りで燃え盛る紅蓮の炎で僕を覆い尽くす。
我慢に我慢を重ねて耐えてきた現実に、僕の心の奥底で眠っていた真実の叫びが
全身から迸っていく。
細胞の一つ一つから吹き出していくような魂の叫びが、僕を覚醒させていく

「分かるもんか・・・!分かるもんか・・・!!僕がどんなに辛い想いをして
今まで生きたきたかなんて・・・君に分かるはずもないだろ!?
・・・僕の・・・僕の苦しみも知らないくせに
『もっと素直になってみろよ!』なんて分かった口を叩くな!」

言いながら彼の防護服を掴み挙げ、気持ちの赴くままに叫ぶ。
自分でも制御できないほどの本能が僕の全身を覆いつくし、
魂の命じるままに口から放たれていく言葉。
怒りに任せた瞳で見上げた先には、何故か優しい眼差しで僕を見下ろしている彼の瞳があった。

僕の姿を通して・・・まるで昔の自分を見ているような・・・
そんな気持ちが彼の瞳には込められているようだった。

「・・・やっと・・・お前の本心が出たようだな・・・」
「・・・えっ!?・・・今、何て?」

彼の防護服を掴み挙げていた僕の指先が一瞬だけ緩む。

「・・・今・・お前を取り巻いている状況を全て受け容れろなんて無茶な事は言わん。
だがな、ひとりで何もかも背負い込むのは止せ。・・・そんなことを続けていたら・・・
お前はいつかきっとボロボロに崩れちまう」
「・・・」
「辛かったら八つ当たりしてもいい。泣き喚いてもいい。・・・お前がお前でいられるのなら
俺達仲間はお前の行き場のない哀しみを全部丸ごとお前を受け止めてやるつもりだ」
「勝手なことほざいてんじゃねぇよ!僕の・・・僕の哀しみを知りもしないくせに、ふざけた言葉を
並べやがって!」

言いながら零れ落ちる透明な雫。闇を切り裂く悲痛な想いが・・・
本当は必死に助けを求めているのだと分かったのは・・・
次に聞こえた彼の言葉が届いた瞬間だった。

「・・・お前が俺達を拒絶しようと、受け容れまいと・・・
俺達がお前を受け止めてやりたいという想いは、ずっと変わらない」


・・・ずっと・・・ずっと願っていた・・・

誰かにとって自分が必要な存在であると確証できる確かなものが・・・

自分はこの世に生きていていい存在なのだと・・・

そう思わせてくれる何かが欲しくて堪らなかったのだと・・・


「・・・仲間だから・・・大切な・・・お前は俺達にとって大切な・・・仲間だから!」

力強く言い切った彼の言葉が、僕の心に圧し掛かる漆黒の闇を
ゆっくりと・・・静かに押し上げていく。
何処からか差し込んだ一筋の光が・・・夜明けへの途を柔らかに照らし出し始めた。

・・・この光の行き先にはきっと・・・!

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