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目覚めていく愛 〜字書きの為の50音のお題〜

2005年2月21日 サイト初掲載作品

花の生命は短い。
・・・そう思うのは花の美しさに魅せられている人間の感情であって、咲き誇る花自身はただひたすらにその短い命を力の限り燃やし尽くすだけ。

その限りある生命の輝きが、人の心に感動を齎し続けているとは知らずに・・・花は咲く。
自分の命を見つめ続けている想いに気付かぬまま・・・ただひたすらに花は咲く。

・・・今日もまた・・・美しい咲き綻ぶ花の陰で・・・二つの想いが重なった。

*****

予想はしていたけれど、花が散っていくのを見るのは辛い。
・・・それも自分と大切な人が一緒に育てていた花の散り際を見るのは尚更辛い。
もう一つ付け加えて言うならば、その人と自分の心を結び付けていた花だからこそ・・・その辛さに拍車が掛かる。
いつかは散っていくと知りながらも・・・やっぱりこの花は自分達にとって特別の意味を持つ花だったから・・・
一際名残惜しい気持ちが心を蔽い尽くす。

「・・・ずっとそこにいたのかい?」

窓際に置かれたプリムラの鉢植えから零れ落ちた幾枚かの花弁を手に取って、虚ろな瞳のまま立ち尽くすだけだった自分にそっと掛けられた穏やかな声。
振り向くといつの間にか背後から私の様子を窺っていたような貴方の視線は、私の手元に注がれていた。

「・・・それが最後の一輪だったんだね」

掌に載っていた花弁は重さを感じさせないほど軽いはずなのに、何故か今はその重みがずっしりと伝わるような気がした。
きっとそれはこの花に託された数々の言い尽くせない想いが花弁に込められているからだと・・・私は知っていた。
きっと貴方もそう感じているはず。

「・・・分かってはいるけれど・・・やっぱり切ないです・・・」

この花から齎された色々な感情は、この花が散っても私達の心にしっかりと植えつけられていると分かっている。
この花を育てていた私と貴方の心の土壌に『思い遣り』という愛情の種が蒔かれて、少しずつお互いの心の中で育ち始めているのも分かってる。


・・・でもやっぱり私達の気持ちを『形あるモノ』として、目に見える形で具現化してくれている存在だったこのプリムラの花は・・・とても・・・とても大切だったから・・・。


沈み込んでいく私の気持ちに気付いているかのように・・・貴方はそっと私に語り掛ける。

「・・・確かにこのプリムラは僕達の心を前にも増して強く結び付けてくれた存在だった。・・・だけどこのプリムラが僕達に齎してくれた気持ちは、ずっと忘れることなどないはずだ。君も心の中できっとそう感じているように・・・」
「・・・島さん・・・」

優しい口調の中に込められた前向きな励ましを感じつつも、この散りゆくプリムラを目の前にしていると・・・素直に貴方の言葉に頷けない私がいて。
きっとそれは誰よりも何よりも貴方の事を大切に思っているから・・・
と口に出して言えない自分がいることも僅かながら自覚しつつ・・・。

そんな私を見透かしているかのように、貴方は淡々と言葉を紡ぐ。
時の流れに寄せて。優しい思いに託して。

「・・・テレサ。君に・・・これを受け取って欲しいんだ」

微かに頬を赤くした貴方が、恐る恐る目の前に差し出した綺麗な包装紙に包まれた小さな箱。

「・・・これを・・・私に?」

突然の貴方の申し出に戸惑う心を隠せない。
私の言葉を受け取った貴方はほんの少しだけ頷くと、そのまま頭に手をやりながら照れ臭そうに二、三度髪を掻き毟った。

「・・・私なんかが受け取ってもよろしい品物なんですか?」

その問い掛けにさっきまで照れまくっていた貴方は、一瞬だけ真剣な表情に戻ると言葉を継いだ。

「・・・これは君にしか、その価値が分からない『モノ』だから。君だけに・・・受け取って欲しいんだ。僕の君に対する心からの気持ちだから・・・」

それ以上・・・貴方の口から言葉が漏れることはなかった。

しばしの沈黙が続いた後・・・私はそっとその箱に手を掛けて丁寧に包装紙を剥がし始めた。
包装紙が剥がされていくたびにこの箱から伝わってくる言い様のない気持が私の心を包み込み始める。
最後まで包装紙剥がしきった箱を今一度掌の上でしっかりと支えると、静かに箱の蓋を開いた。

徐々に姿を現しはじめたその品物を見つめた瞬間に、何故か涙がポロポロと頬を伝って零れ落ちていくのが分かった。
止めようとしても後から後から溢れ出る涙の粒が床の上に次第に小さな水溜りを作る。

「・・・どうして・・・これを・・・?」

何とか胸の奥から引っ張り出してきた言葉は、涙声で聴き取りづらかったに違いない。

「・・・ずっと大切にしたかったんだ。このプリムラが一番最初に咲かせてくれた花を。・・・いつまでも僕達二人を見守っていてくれるように・・・って」

そういうと貴方は手を伸ばしつつ箱の中から丁寧な手付きでそれを掬い取ると、私の首元にそっと巻き付けた。


涙滴を象ったクリスタルで出来た、ペンダントトップの中に閉じ込められているプリムラの花。

いつまでも、色褪せることなく咲き続ける・・・貴方と私の心を結びつける可憐で清らかな花。


「・・・幸せになれるよ・・・君となら」


虹色の光を放ちながら揺れるクリスタルの中でプリムラの花が・・・一際鮮やかに輝く。

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