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超・超短編です。
ダイロンの聖少女の最後のシーンからイメージしました。
よろしかったらどうぞ。
「・・・約束は守れそうか?」
西日が傾いて、部屋の中を金色の光で満たす。
黄昏時の空の彼方で、沈みかけたノルンの最期の輝きが今、終わりを告げようとしていた。
言いながら、ほんの少し表情が翳りつつある自分自身にジョウは気づいていた。
目の前にいる人物の、あまりにも真っ直ぐな眸の煌きが、今の自分には眩し過ぎたから。
・・・いや、違う。
その眸がまるで真実を映す鏡となって、不甲斐ない姿のまま右往左往している、紛れもない自分自身の姿をまざまざと見せ付けているようで、ジョウはその穢れない眸を直視する事が出来ずにいた。
胸に燻る痛みは・・・己の不甲斐なさのせいなのか、それとも本当の気持を見据えようとしない自分自身の弱さのせいなのか。
「守るために約束があるんじゃない。自分自身の力で必ず為し遂げると決めたから、おいらは約束したんだよ、兄貴」
リッキーの言葉ひとつひとつが胸の奥深くを突き刺す。
リッキーの言葉に何一つ虚飾や嘘がない分だけ、ジョウはリッキーから痛烈な批判を浴びせられているような気がした。
そう、それは紛れもなく・・・今、自分が面している状況を見て見ぬフリをしているだけと、断言されたにも等しい。
約束を誓ったリッキーと、約束すら言い出せない自分。
好きな相手を安心させられるリッキーと、気になる女性を不安にさせてばかりの自分。
いっとき離れてしまうのに、この先の人生を賭してまでの覚悟を決められたリッキーと、いつも一緒にいられる事に甘えてしまって、結局は何もしてあげられない自分。
ジョウの思いに同調するかのように、長く伸びた影法師が時間の波に揉まれて歪む。
「・・・兄貴。決めるのは、他の誰でもない『自分自身』だよ・・・」
リッキーの言葉が静寂の時間の中に、静かに零れ落ちる。
ジョウの脳裏を、金髪碧眼の美少女の柔らかな微笑みが過る。
同時に胸に込み上げてきた気持が、出会った瞬間からいつもいつでも変わらずにいること・・・
それが・・・それこそが全て。
・・・決断の時期はそう、遠くないはず・・・
無意識に握り締めた掌の中で、運命の歯車が徐々に廻り始めた。
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