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朝日に向かって

2002年6月28日 サイト初掲載作品

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白く浮かび上がる月が、寂しげな微笑みを投げかけながら、フェードアウトしていく明け方の空。
白んできた地平線の片隅に、夜の足跡を残しながら黙って立ち去ろうとする、星屑の欠片たち。
空を覆い尽くそうとする眩い光の切れ端が、だんだんと煌きを増す。
少しずつ後退していく闇の名残の中で、ただ風だけが・・・・・・いつもと変わらぬように通り過ぎていく。

マフラーを首にキュッと結び付けた瞬間、身体の奥底から沸き上がってくる、
堪えようのないぞくぞくとした緊張感が、全身を瞬く間に駆け巡る。
後から後から込み上げる高まる緊張と止めど無い不安が、自分自身を襲う度にぶるぶると震え出す身体。
そんな想いを振り払う為にキッと前方を睨み、唇を噛み締め、両の拳に力を込めて握り締める。

・・・俺は・・・俺であり続けるために
・・・・・・今からジェット・リンクは002になるのだ

心の中で唱えた呪文は、まるで飛び立とうとするシャボン玉が一瞬のうちにその命を終わらせるように、
胸の奥に渦巻いていた迷いを跡形も無く霧散させる。

握り締めていた両の拳を胸元まで持ち上げながら、少しずつ力を緩めると、
手の平の中に潜んでいた迷いと不安を象った魂の化身が、空に向かって徐々に解き放たれていく。
ゆらゆらと天に吸い込まれるように、立ち昇っては消えていくものを見届けつつ、ゆっくりと前に歩き出す。
棘のように身体に纏わり付いては追い縋る、恐怖と苦悩を必死に振りほどきつつ・・・。

躊躇いを捨て去り、悲愴な覚悟で、ジェット・リンクとしての己を
たった今煌く朝日に向かって脱ぎ捨てた彼の背中に、サイボーグ戦士002の影がぴたりと重なる。

ジェット・リンクの抜け殻を受け止めた、眩いばかりの金色の光は、彼を温かく見守りながら、
彼が脱ぎ捨てた抜け殻をそっと抱き締め、サイボーグ戦士002の行く手を差し示す一筋の道を照らし出す。
いつか彼が戦士としての役目を終え、ジェット・リンクとして戻る日を待ちわびて・・・。

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