[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
本日、気象庁より梅雨明けが宣言されました。
・・・・・・と言う訳でもないですが(笑)、2003年8月27日にサイトに初掲載した作品を
再掲します。
この頃は2と4のお兄さん方の魅力に、かなり参っていた時期です(笑)
よろしかったらどうぞ。
窓ガラスを伝う、雨の雫。
幾筋もの銀色に光る光跡が、封印した筈の過去に染み込んでは蒸発していく。
己の中に滞っている、やるせない気持を道連れにして。
鉛色の雲・・・・・・
湿った風・・・・・・
降り続く雨・・・・・・
届かない夢・・・・・・
行方知れずの明日・・・・・・
宙に浮いたままの現実・・・・・・
窓枠に片膝を立てて座りながら、虚ろな瞳で降り続く雨を見る男と・・・・・・
反対側の窓枠に背中を預けて凭れかかったまま、瞳を閉じて黙ったままの男・・・・・・。
言葉も交わさず、視線も合わせず、ただ淡々と過ぎ行く時の中で・・・・・・身を持て余す二人の男。
窓ガラスにぶつかって落ちる雨の雫は・・・・・・
二人の男が胸に秘めた想いを、代弁するかのように激しくその身を窓ガラスに叩き付けては・・・・・・
儚い生命を終える。
まるでそうありたいと男達が願う、壮絶な生き様をまざまざと見せ付けながら・・・・・・
天から零れ落ちた雨粒は、地上に降り注ぐ役目を終えると・・・・・・跡形もなく消え去るのみ。
己の生きる道を信じ、何の躊躇もせずに人生を全うできる『潔さ』の前に、理屈は要らない。
襲い掛かる恐怖と苦悩を振り切って、非力な自分自身を必死に鼓舞しながら戦い抜く『強さ』の前に、
言い訳など通用しない。
過去に囚われそうになる自分を捨て去り、深い絆で結ばれた仲間達と共に明日を切り開いていこうと
願う『未来』の前に、杞憂など必要ない。
・・・・・・ただ自分の心の命ずるままに、自分がこうだと決めた道に、最初の一歩を踏み出せばいいだけなのに・・・・・・
・・・・・・ただ、それだけなのに・・・・・・
窓枠に背中から凭れかかっていた男が、ゆっくりとした動作でズボンのポケットからタバコの箱を
取り出すと、慣れた手つきで口に咥えつつライターの火を付けた。
すかさず反対側で窓枠に座り込んだままの男に、黒手袋をしたままの手でタバコの箱を差し出す。
男は一瞬躊躇った後、指先を伸ばして一本掴み取ると、男と同じように口の端に咥え込んだ。
ボウッと陽炎のような炎が暗く湿った部屋の中を照らし出すと、床に落ちた影法師が二つ、紫煙の中に溶け込んだ。
ぼんやりと浮かぶ二人の男のシルエットは、交互に煙を吐き出しながら、部屋の中を空虚と怠惰の感情で
満たしていく。
口に出すことさえも憚れるほど辛く苦しい気持に苛まれて、二人の心が麻痺していくのは、当然の帰結と言えた。
戦いという現実の前では泣き言はおろか、敵に対して怯むことさえ許されず、ただただ前に立ちはだかってくる、ありあらゆるモノをなぎ倒していくことしか出来なかった自分達自身に、人間らしく『生きる糧』など見出せる筈もなかった。
ましてや次から次へと襲い掛かる敵に対して、正義の為に闘うという尤もらしい理屈を振り翳して闘わなければならなかったことに、疑問の余地を挟むことが出来ないほど時間的余裕が皆無だった自分達だっただけに・・・・・・そのツケが今になって還ってきていることを、嫌というほど思い知らされているのだった。
逃げ出すことは簡単だった。
死のうと思えば、いつでも死ねたはずだった。
・・・・・・それが出来なかったのは・・・・・・
サイボーグとして改造させられた『仲間』達の苦しみを、一人だけで逃れることはできないという
ちっぽけなプライドと、過去に対するケジメと対峙せずに逃れようとする、卑怯者に成り下がりたくない故だった。
どんどん歪んでいく心のバランスがぐるぐると渦を巻いて、己を苦渋の世界に引き摺り込んでいるのに
気づき、男達の心は無視を決め込んだ。
しかしその一方で、ジリジリと増幅していく心の闇の部分に惹かれていきそうになるのを、必死に思い止まるのにも限界があった。
クリアーとダークがお互いを牽制しあう、グレーな心の領域にはっきりとしない靄が広がっては、
男達の気持を落ち着かせないモノに仕立て上げていく。
・・・・・・しかし、その捉えどころがないモヤモヤとしたものが・・・・・・
いつしかはっきりと形を成していく、『何か』に変化しつつあるのを、二人の男はおぼろげながら分かっていた。
ゆっくりと・・・・・・じわじわと・・・・・・でも、着実に『何か』の手ごたえを、肌で感じ始めた男達の唇が、微かに緩んでいく。
緩んだ口元から小さな笑みが零れて、男達が咥えているタバコから灰がパサッと床に落ちた。
まるでスローモーションのように、コマ送りで緩やかな時間を紡ぎながら。
「・・・・・・探していたものが・・・やっと、見つかったようだ・・・・・・」
窓枠に座り込んでいた男の蒼い瞳になお一層蒼い色が加わり、濁っていた蒼が澄み渡るスカイブルーに
変化していく。
「・・・どうやら俺達の梅雨明けも・・・近いらしいな・・・」
窓枠に背中から凭れかかっていた男はゆっくりと振り返ると、窓越しの空を見上げた。
アイスブルーの瞳には、黒く立ち込めた雲の隙間から差し込んだ一条の光がくっきりと映りこんでいた。
降り続いていた雨もいつしか小雨になり、澄み切った空気と共に爽やかな風が透明な想いを滲ませる。
閉め切った部屋の窓を開け放って、新鮮な空気を部屋に招き入れた二人の男に宿り始めた想い。
・・・・・・それはきっと・・・・・・。
空の片隅から顔を覗かせた太陽の光は・・・今まさに夏の日差しとなって煌く想いを地上に
降り注ぎ始めるのだった。
≪ 秋の夜(島&テレサ) | | HOME | | 光、満ち溢れるとき ≫ |