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2005年11月25日 サイト初掲載
空を埋め尽くす満天の星。
夕暮れから急激に冷え込んだせいで、漏れ出す息は周囲の闇にその丸みを帯びた輪郭を溶け込ませる
ことなく、空中を浮遊したまま一気に消える。
肌を突き刺すような冷気は、心の奥に巣食う罪の意識目掛けて鋭い刃をひっきりなしに浴びせかける。
立ち止まったままの現状。
過ぎていくだけの時間。
循環しながらジワジワと勢いを増していく負の螺旋。
堆く積まれていく過去の呪縛。
逃れられない運命(さだめ)であるならば・・・いっそ・・・
溢れ出す感情を堰き止めようと決意した瞬間・・・空の端を瞬く間に駆け抜けた一筋の流れ星。
それは・・・
*****
「・・・今夜は冷え込むから、一枚余分に羽織っていた方がいい」
背後から優しく掛けられた厚手のカーディガンは、闇の中に消え入りそうだった私の心をも包み込むように
温かかった。
「・・・今、こうして君と並んで立っている瞬間も、この果てしなく広い宇宙の何処かで星が生まれたり、消えたり
しているんだね」
深い沈黙の谷間に零れた言葉の欠片が、淡い夢の花となり闇夜の中で無数に咲き綻ぶ。
幻想の中で一斉に咲き乱れた花の如く、ひらひらと優雅に舞い散る夢幻の花弁の影に隠れた涙の跡。
霧散していく意識に潜む、儚き夢を紡ぐ糸を手繰り寄せると・・・
そこに佇んでいたのは強くしなやかな意思の礎。
・・・あのとき私が貴方と出逢わなければ・・・
貴方にとってもっと幸せな人生を歩めたかもしれない。
いつもいつでも私の心の中を埋め尽くしている負の感情が連鎖反応を引き起こして、
前向きになろうとする気持ちを奈落の底へと突き落とす。
這い上がろうと願う、ほんの少し上向きな気持ちさえ即座に叩き落す自責の念は
僅かに残っていた希望さえも、負の感情に屈服させようとしていた。
「・・・あのとき、貴方と逢わなければ・・・」
言い掛けた言葉の続きを制止するかのように、口元にそっと当てられた貴方の人差し指。
反論することを赦さない、貴方独特の柔らかい抑止力に言葉を失ったまま立ち尽くす。
それにも増して抵抗する気持ちを一切奪い取ってしまうような、貴方の優しい微笑みが私に向け一心に注がれる。
私の心の奥に蔓延る罪悪感をしっかりと見据えるかのように、強い優しさを称えた微笑みは
頑な闇夜を少しだけ崩す。
「僕と君がこうして今、一緒にいられることが一番大事だよ。過去を忘れるんじゃなくて、
過去から目を逸らさず、対峙しながらも・・・『今』を精一杯生きることが、きっと一番大事だと思うから」
周囲を埋め尽くす冷気が一瞬だけ揺らいだと同時に闇夜を切り裂くように一斉に煌きを解き放った星の光。
「君に出逢ったあの瞬間から・・・僕と君が出会ったのは運命じゃなく、必然だったんだって・・・
僕は今でもそう信じてる」
私の口元に当てられていた貴方の指先から静かに伝わってくる願い事が一つ、心の奥底に流れ込んでいく。・
『一緒に生きよう』
貴方の想いに共鳴して、ゆっくりと満たされていく胸の中で・・・またひとつ愛の色が深まっていく。
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