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4人の葛藤〜タロスとダンの場合〜

アルフィン、ジョウと引き続いてきたコラムは今回で最終回となります。

タロスとダンの場合を、今回二人同時にUPします。
よろしかったらどうぞ。

〜タロスの場合〜

『クラッシャーの不始末は、クラッシャー自身の手でかたをつける』原作5巻で、ダンが評議会上において発した台詞の一つです。
ジョウのチームでこの台詞の意味を一番理解している者は、タロス以外にありえません。
5巻で濡れ衣を着せられていると知りながらも息子であるジョウを、評議会議長ではなく父親として容赦なく断罪しようとしたダンと、真っ向から対峙せねばならなかったタロスだからこそ、その複雑な心中が窺い知れます。

もし仮に対峙する相手が、非合法な仕事に手を染めたり、仲間の評判を貶めるようなクラッシャーであるのならばタロスにも、それ相応の覚悟は出来ている筈だと想います。

・・・しかし、敵の術中にはまり、意思を持たぬ戦う機械として操られている相手だとしたらどうでしょう?

現に7巻でクリスに洗脳されたと想われるタイラーと対峙した時、ジョウは最後の最後までタイラーの意識が戻る可能性を捨てきれませんでした。
タロスとてそれは同じで、タイラーへのダメージを最小限に留めておける事に一番の注意を払っていました。
タロスの眸に、タイラーの姿とジョウの姿がダブって見えていたとしても不思議ではありません。
また、身体の半分以上がサイボーグ化されてはいるが、心は変わらずにいる自分と人間ではあるのに、意識のない殺戮マシーンとしてクリスの手駒にされているタイラーの姿を重ね合わせて・・・残酷な現実と向き合わなければならなかったタロス。

マージの死で、タイラーに対する感情がいっとき麻痺してしまったとしても時を経るにつれて、深い哀しみがタロスの胸の内を覆っていくのかもしれません。
時間と共に哀しみが薄らいでいくのではなく、逆に悔恨の情が日に日に大きくなっていってしまうような気がします。
誰にも言わず、自分ひとりだけの胸に、その遣る瀬無い気持ちを押し留めて。

タイラーの最期を看取ったのがジョウではなく、タロスであった事が私の中で大きなポイントとなりつつあります。


〜ダンの場合〜

タイラーをああいう形で失ってしまって一番深く傷ついているのは、実はダンではなかろうかと想います。(勿論タイラーの両親は別として)

ジョウと同期にクラッシャーになったタイラー。
言うなれば息子のジョウと同じ期待・未来を彼に託していたと言っても過言ではないと想います。
自分達の世代でクラッシャーという仕事の礎を築き上げた人間にとって、後の世代を担う後継者を育て上げることは、ダンにとってこれ以上ないほどの責任と、また最大の誇りを賭けた任務を請け負っているに等しいことだと想います。
彼らが築き上げてきた功績を自分達の世代で終わりではなく、後の世代へとしっかりと引継ぎ、そして永久に繋げていくことが創始者としての最大の目標だと想うからです。
それ故にこれから先の綿々と続いていくクラッシャーとしての仕事の道筋を立てることに関して、息子達世代に賭ける想いは並々ならぬものだと感じます。
5巻でダンはタイラーがアトラスに乗り込むことを、表面上は不承不承許可しますが、言い換えればそれは、ジョウには伝え切れなかった諸々のこと(クラッシャーという仕事に対する心構えやチームリーダーとしての指揮全般、またチームを統率する上での決断力や判断力など)を、タイラーに教える意味合いがあったのだと想います。
クラッシャーという職業は一匹狼では成り立ちません。チームという大前提があり、そしてそれを取り巻くクラッシャ−仲間があればこそ、クラッシャーという仕事は初めて成り立つのです。
チーム間で切磋琢磨することでクラッシャーとしての意識は向上し、また能力が格段に上がることで、クラッシャーの評価は高まっていきます。

ジョウにとって同期であるタイラーは、まさにその条件にうってつけの人間であり、またライバルであることが各々の意識を向上させることを、ダンは知っていたと想います。

人には言わないまでも、次代を担うクラッシャーの先頭に立つ者として、ジョウに対する期待と同等の期待を寄せていたはずのタイラーを失ってしまった事、そしてそれが図らずも息子のチームが関与していたとなれば、ダンの落胆および懺悔の気持ちは相当なものだと想います。

タイラーの両親に対する申し訳なさと、ジョウに対する言いようのない想い、そして何より期待を掛けていた人間を失ってしまったという喪失感がダンを一気に襲った筈です。

苦悩と喪失感の狭間で、評議会議長を続けるダンの胸の内を知る者は・・・今となっては亡き妻ユリアだけなのかもしれません。

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