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暗黙(CJ SS)

久し振りのCJSSの更新になります。

第一巻直後に、もしかしたらこんなやり取りがあったんではなかろうか?という妄想をネタに書いてみました。
やっぱり親目線になってしまいがちになりますね(笑)


よろしかったらどうぞ。

★更新停止期間中にボタンを押して下さった方、ありがとうございました!★

静寂を破るようにして執務室に突然鳴り響いた電子音。
その音が耳に届いた瞬間に、ある予感が自分を襲うのに気がついた。


・・・・・・おそらくそうに違いない。


鳴り続ける電子音を二、三度やり過ごした後、小さく息を吐いてボタンを押したと同時に、侍従の幾らか緊張した声が耳朶を打った。

「クラッシャー評議会議長、クラッシャーダン様が陛下との懇談を希望されております。いかがなさいますか?」

侍従の声を聞き届けながら、少しだけ口許が緩むのを止められない。


やはり、そうだったか。


確信と共に、少しずつ込み上げてくる高揚感が全身を緩やかに行き渡っていく。
そろそろあちら側から何らかのコンタクトがあるはずだと推測していたのと、ほぼ同じタイミングで掛かってきた入電。
その偶然にも近い出来事に、何らかの運命を感じずにはいられない興奮を抑え切れなくなりそうで。


文句を言われるか、もしくは冷たく却下されるか。
いずれにせよ、何かクレームに近い事柄だけは確かだろう。


相手からの否定的な意見を予測はしても、何故か妙に楽観的な自分がいた。
それは面識ない相手と言えど、根底から分かち合える何らかの想いで繋がっているのだという、不思議な感覚があったからだった。

「構わん。回線を繋ぎたまえ」

「承知いたしました」

事務的な声と共に通信が一旦途切れた。
短いような、それでいて長いような一瞬が部屋に満ちる。
しばしの沈黙の後、小さなノイズと共にスクリーン上に映し出された男から低く重厚な声が漏れた。

「この度はお忙しい折、お目通りを許していただきありがとうございます、ハルマンⅢ世陛下」

穏やかな声音とは裏腹に鋭さを隠し持ったような眸が男の本質を見事に表しているようだった。


この男・・・・・・やはり只者ではない。


僅か一言声を漏らしただけなのに、画面上から滲み出る凄まじい存在感。
それは一流を極めた者にしか解らない、独特の威圧感が漂っているようで。
久々に出逢う”本物”に、心なしか自分自身も身が引き締まる想いに包み込まれていた。

「堅苦しい挨拶は抜きにしようじゃないか。現状から言えば、本来なら私が君に対して何らかのアクションを興さねばならぬはずだったろう。先に君から連絡をいただいて済まなかった。許して欲しい」

「恐れ入ります。・・・・・・陛下が既に用件を想定ずみでいらっしゃるのなら、こちらとしても都合がよいので」

一旦言葉を切った後、言葉を選ぶようにして語りだした男の表情に凄みが増す。
そう、それは言い換えるならば、想像を絶する窮地に何度も追い込まれながらも、知恵と勇気と気力で難解な状況を悉く打破してきた人間しか持ち得ない表情かもしれなかった。

「本日、クラッシャージョウチームのチームリーダーより、正式に一名の採用申請が届きました」

硬質な声の響きの中に、私に最終確認を要請しているような思惑が見え隠れする。
たぶん正式採用通知発行前に、こうして最終確認を本人ではなく親に求めるのは異例中の異例なのだろう。
それもクラッシャーのトップである彼が直々に最終確認を要請するのは、クラッシャー創設以来初めての出来事に違いない。
私は彼の姿勢に、一人の人間としての類まれなる誠意を感じ取った。
多くの人間を束ねるのは容易ではない。
それは私が身を持って知っている。
上に立つ者の判断ひとつ如何で、多くの人間の運命を左右するからこそ、自分の言葉ひとつ、行動ひとつに全責任を負わなければならぬ覚悟が必要である。
言葉で言うのは簡単だが、それは想像を絶する自制と冷静な判断力が、常に自らの身に付き纏うのだ。
たとえ一瞬たりとも気を緩めることは出来ない。

「私の意志は全て娘に委ねている。彼女が自分自身で決めた道だ。私から言うべき事は何一つない」

予め私がそう言うのだと彼は想定していたのだろう。
スクリーン越しの男は表情を一切変えず、口許に小さく笑みを浮かべると言葉を紡いだ。

「おそらく周囲の方々から色々なお話が陛下の耳に届いていらっしゃると思いますが、クラッシャーとは所謂”そういう世界”です。大切な御息女をお預かりするのは、宇宙で一番過酷な現場であると言っても過言ではありません。それでもよろしいと?」

「娘は自らの意思でその道に進む事を選んだのだ。その意思を尊重せずして、何が親と言えようか。私の見当違いでなければ、親として私も君と全く同じ立場であるに違いない。私が言うことは間違っているかね?クラッシャーダン。いや、クラッシャージョウの御尊父と申し上げた方がよろしいか?」

一瞬の沈黙の後、スクリーンから零れ落ちた笑いが彼と私の心を一つに繋ぎ合わせた。
それはまるで互いが思い描いていた感情が、寸分もなく見事に一致したような爽快な感覚にも似ていた。

「御息女には手を焼かれましたか?」

こちらの返答を見透かしたような問い掛けに、私の顔も綻んでいく。

「きっと君の御子息と同じように」

その会話だけで、私達の意思疎通はすんなりと図られた。
もうこれ以上会話を続けなくても、彼と私の共通の見解が一切ぶれる事はないだろう。
そんな確証がお互いの心に芽生えていたはずだ。

「後日正式な採用通知がクラッシャージョウを通じて、御息女の元に届くことでしょう。・・・・・・恐れながら陛下、一つ御願いがございます」

「構わん。何なりと申せ」

「ではお言葉に甘えて、僭越ながら申し上げます。御息女がクラッシャーの一員となった暁から、一年に一度はご両親の元へと里帰りさせる事を認めていただけたらと思います。これはクラッシャー評議会議長としてではなく、一人の親としての私の訴えであり、心情でもあります。どうかお許しを」

深々と頭を下げ、訴える彼からは威厳が削げ落ち、代わりに同じ親としての立場から漂う気配が感じ取れた。
そこには最愛の息子と素直に心情を曝け出しあう事を極力避けつつ、自らの姿勢を持って懸命に人生の指針を指し示している無骨この上ない父親の愛情が漲っていた。
その心根に私の想いも共感していく。

「よかろう。ただしこちらもその訴えを認める前に一つだけ条件がある。この件に関しては娘の自発的な意思を尊重したいので、里帰りの決定権はチームリーダーではなく、彼女自身に委ねてやりたいのだ。無理な御願いだろうか」

私の言葉を黙って聞いていた彼の表情に、一瞬だけ宿った父親の顔。
お互いに言うべき事は言い尽くした感が同時に起こった。

「確かに承りました。・・・・・・陛下、突然の無礼にも関わらず、有難きお言葉を頂戴し、感謝の念に堪えません」

「君とはきっといい酒を酌み交わせるに違いない」

スクリーン越しに互いに交わした視線に、言葉を超えた感情が篭る。
父として、そして人を導く立場の人間として共鳴し合っていく想いに身分は関係ないのだと、この日強く感じた私だった。

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