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木漏れ日の中で(島&テレサ)

5月も今日で終わりですね。
だいぶ不安定な天候に悩まされる毎日ですが、どうぞ体調にお気をつけてお過ごし下さい。

島さんとテレサの超短編をUPしました。
ありがちなネタですが、よろしかったらどうぞ。

過ぎ行く5月に想いを寄せて・・・・・・・

★ボタンを押してくださった方、いつもありがとうございます!★

晴れわたった空を軽やかに滑空していく鳥達の群れ。
どこまでも透き通っていく青空の中に溶け込んでいく雲の切れ端。
吹き抜ける5月の風に滲んでいる光は、いつになく透明感を増して燦燦と降り注ぐ。

幾重にも折り重なる木々の緑を擦り抜けて、地上へと光臨する光の柔らかさに癒されていく心。
風が通り抜ける度に、揺れる枝同士が奏であう自然の響きが心地よくて。
大木に凭れ掛かる様にして身体を預けながら、背中から伝わってくる木の息吹を全身で受け止める。
ちっぽけな私の存在を、その包み込むような暖かさで丸ごと受け止めてくれるような大木は、まるで優しい貴方そのもの。
大木の根元にそっと座り込みながら目に見えない自然の息遣いを感じつつ、膝の上に頭を預けて眸を閉じている貴方の顔をそっと覗き込んだ。

安心しきったように穏やかな笑みを浮かべて、心地よい眠りに浸りきっているような貴方の顔を見つめているだけで満たされていく気持ち。
膝に掛かる確かな重みは、この世で一番失いたくない大切な・・・・・・大切な存在。
眸を閉じてはいても、ずっと私の存在を確かめていたいと願っているみたいな貴方の指先は、私の指先に軽く触れたまま決して離れようとはしない。
たとえそれが無意識の行動だとしても、私の事を二度と手放すつもりはないという強い意思に基づいているような仕草に、心が静かに震えだす。
 

それはきっと貴方だけではなくて、私がいつもそうしていたいと願っていることだから。
いつもいつでも貴方の存在を心に・・・・・・そして身体に感じ続けていたいと切に願っている、私の気持ちそのものだから。
 

気がつくと小鳥達が美しい囀りを響かせながら、貴方と私の周囲を取り囲んでいた。
恐れる素振りすら見せず、逆にささやかな交流を望んでいるような小鳥達は可愛いお喋りを繰り返す。
 

『ごめんなさいね。もう少し島さんをこのまま休ませてあげたいの。島さんが起きたら、一緒に遊びましょうね』
 

心で囁きかけながら、唇にそっと人差し指を立てて合図を送る私の動きを察したかのように、小鳥達は囀りのトーンを落として近寄ってきた。
 

『我侭を聞いてくれてありがとう』
 

小さく頭を垂れる私の目の前で、木漏れ日が小さく揺らめく。
まるで光がそっと微笑んでいるような錯覚を覚えて、眸を凝らす私の指先が不意に強く握り締められた。
 

「・・・・・・君らしいな」
 

柔らかな声が木漏れ日の中で反響する。
驚いて顔を覗き込む私に、パッチリと眸を開けたままにこやかに微笑む貴方。
眸に映り込むお互いの姿を通じて、はっきりと刻み込まれていく確かな証。
 

「もしかして・・・・・・ずっと起きていらっしゃったんですか?」
 

困惑して声が多少上擦っている私を見つめながら、貴方は悪戯っ子のように微笑み返す。
 

「さあ?どうだろう?」
 

貴方の言葉を受け止めた瞬間、恥ずかしくなって頬が真っ赤になっていくのを止められなくなる。
貴方の顔をそっと覗き込みながら、この厳かでとても貴重な時間を、この上ない嬉しさと共に感じ続けていた私の表情を見られていたのかもしれないと思うと、恥ずかしさで消え入りたくなってしまう。
 

「島さん、ズルイです・・・・・・」
 

萎んでいく口調に、今の心情がありありと滲む。
このまま直ぐにこの場から逃げ出したくなってしまう私の想いを察知したように、貴方は膝から素早く身を起こすと、そのままギュッと胸の中に私を抱き寄せた。
 

「黙っていたのは悪かった。・・・・・・この場面で実力行使は卑怯だと思うけど、こうでもしなければ君はきっと逃げ出してしまうかもしれないから」
 

貴方の声を聞きながら、全身の力が緩やかに抜け落ちていくのが解った。
抱き締められた瞬間、即座に抵抗を試みようとした私だけれど、貴方が紡ぎだした言葉はその気力さえも根こそぎ奪ってしまう威力を持っていた。
 

「島さん・・・・・・私・・・・・・」
 

か細くなっていく声とは裏腹に、抱き締められた腕の中で貴方の胸に取り縋る指先が次第に強くなっていく。
 

「テレサ・・・・・・」
 

私の心に呼応するかのように、一際強く抱き締めた貴方の腕に力が篭る。

言葉では言い尽くせない想いを載せるように、お互いの姿を写しこんだ眸がゆっくりと近づき合い、この世で一番大切な存在を刻みつけながら閉じられていく瞼。


木漏れ日の祝福を受け、重なり合っていく一つの想いが、5月の空に今、溶けていく。

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