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Pure

2003年5月23日 サイト初掲載作品

(注:93ラブラブのお話がお好きの方はご注意願います)

解きたいと思っていた・・・

自分達に心配かけまいと、己を押し殺して必死に辛さや苦しみに耐えている、彼女の張り詰めた心の糸を・・・

解いてあげたいと思っていた・・・


・・・それはたぶん・・・彼女に初めて出会ったときに・・・

心の片隅に住み着いた小さな・・・ほんの小さな結晶で・・・

・・・でもそれは・・・愛じゃなく・・・恋じゃなく・・・

きっと・・・オトナになっても純粋であり続けたいと願った

儚く脆い希望の生まれ変わりなのかもしれなかった・・・

*************

真っ赤に燃え上がる夕日が、空を焦がしながら山の向こうへと落ちかかる。
長く伸びた二つの影が名残惜しむように時と戯れる。
夕闇に誘われた一番星が煌きを増す度に広がっていく薄墨の雲が、風に流れて千切れていく。

「・・・もう止せよ・・・」

自分の制止を振り切って祈り続ける彼女の瞳を伝う涙。

「・・・先に戻っていて、002。私はまだここにいるから・・・」

他者を寄せ付けない程に研ぎ澄まされた彼女の心は、傍らで見守っているものには痛々しいほ粉々に傷ついているように思えた。

「・・・祈っていても・・・無駄なだけだぜ」

分かりきっていることとはいえ、そういう科白しか吐けない自分に反吐が出る。
慰めの言葉ならいくらでも掛けられるはずだった。
・・・でも、その思い遣りが却って彼女を追いつめ、傷つかせるだけだと分かっていた俺は、敢えて悪ぶった科白を彼女に投げつけた。


・・・憎まれてもいい・・・嫌われてもいい・・・


無心に祈り続けるだけの彼女を見ていられなくて、投げ掛けた言葉の奥に潜む影は、いつしか無数の泡となって澱んでいた心の空に向かって煌きながら飛び立つ。

「・・・ったく、しょうがねぇお嬢さんだ」

一心に祈り続ける彼女の姿が眩しすぎて、うろたえる自分を切り捨てるように吐き出した言葉が、空回りしながら宵の空に溶ける。
一つだけ零した溜め息の軽さに自分自身で驚きながら・・・俺は彼女の身体を優しく抱え上げた。

「???何をするのっ!?002!」

半ば悲鳴に近い抗議の声を聞き流しながら、俺は必死に抵抗する彼女の身体を両腕に抱き上げて夕闇の空へと飛び上がった。

「・・・祈りを届けるためには・・・天上に近いほうがいいだろ?」
「・・・!」

俺の腕の中で、驚いて目を見開いていた紺碧の瞳に優しい霞が満ちてきて、みるみるうちに透き通った色の泉が彼女の瞳を覆い尽くしていく。

「・・・泣くなよ・・・」
「・・・だって・・・」

高く・・・天を目指して高く舞い上がる俺の腕の中で、真摯に祈り続ける彼女の姿に・・・

・・・きっと・・・祈り続ける彼女の姿に・・・俺は・・・

ガキだった頃のあの純粋で汚れない心を託しているのかもしれなかった・・・

「・・・届くといいな・・・あんたの祈り・・・」

小さく呟いた言葉を俺の腕の中で受け止めた彼女の瞳に、落日の最後の輝きが金色の残照を残しながら秘めやかに煌いた。

「・・・届くわ・・・きっと・・・」

*************

解きたいと思っていた・・・

彼女の張り詰めた心の糸を・・・

解いてあげたいと思っていた・・・

・・・その祈りが届く日まで・・・

俺はこれからも飛び続ける・・・

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