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信じる気持ち

2002年10月15日 サイト初掲載作品

大きな光の爆発に呑まれながら、爆風に揉まれて宇宙(そら)を漂う僕・・・

体中にぶつかる魔神像の欠片が、最後の最後まで僕をいたぶり続ける・・・


・・・僕は・・・もう・・・


ふっと意識が遠くなる瞬間に、強くしっかりとした力で僕の手を掴んだ手に・・・その手に・・・

・・・僕ははっきりとその感触を思い出した・・・


・・・覚えてる・・・覚えてる・・・!


霞む視界の中で・・・僕を見ながら微笑む彼の姿に・・・思わず微笑み返した僕がいた・・・

****

「・・・ジェット」
「・・・ん?」
「・・・僕、・・・僕ね、茨木が自爆する前に・・・僕を見ていた瞳の中に・・・『ジョー、お前に逢えて良かった』っていう気持ちが込められていた気がしたんだ」
「・・・」
「・・・僕と出会ってなかったら、茨木達があんな目に遭わずに済んだのかと思ったら・・・僕・・・生まれてこなくちゃ良かった・・・って思った・・・」
「・・・ジョー・・・」
「教えて、ジェット!・・・僕は・・・僕は人を哀しませるために生まれてきてしまったの?・僕は・・・僕は何のために生まれてきたの!?」

「・・・ジョー・・・手を出してみな」
「・・・えっ?」
「いいから、出してみな!」
「・・・」

差し出した僕の右手を、ジェットは力強く己の右手で握り返す。
固い、そして無骨な手が、僕の手をしっかり握り返す。
しかしその手の中に込められているのは・・・温かくて・・・純粋な・・・人として・・・仲間としての心が溢れていることに・・・僕は気が付いた。

「・・・なぁ、ジョー。・・・俺とお前がこうして・・・手と手を握っているなんて・・・本来だったら有り得ないことなんだぜ・・・」
「・・・!」
「俺も003も004も、生きているはずのない人間なんだぜ?・・・それがこうしてお前と手を握っている現実を・・・俺は・・・俺は信じていたいんだ。機械の身体になってしまっても・・・俺は信じたい・・・自分自身を!・・・ジョー、お前を!!・・・そして仲間達を!!!」
「・・・ジェット!」

「・・・頼むから、『生まれてこなくちゃ良かった』なんて思わないでくれ!お前が嘆き哀しむ気持ちは痛いほど分かる・・・でも、そう思うことはお前自身を否定することになるし、俺達のかけがえのない大切な仲間であるお前を・・・お前を信じている俺達の気持ちを・・・お前から拒絶されているようで・・・辛い・・・」

俯いたジェットの顔から透明な滴が一滴、握り合っている彼らの手の上に落ちた。
声にならない鳴咽が空気を震わせては、静かな時間に溶け込もうとしていた。

僕の手を握るジェットの手に・・・秋の陽射しが優しく優しく注いでは・・・僕の心に穏やかな影を落していった・・・

****

「・・・ジョー、きみはどこに落ちたい?」

問い掛けるジェットの瞳に、あの日の想いが宿っていた。

僕はジェットの瞳を静かに微笑んで見返しながら・・・そっと小さく呟いた。

「・・・ジェット、僕、信じているんだ!きっと・・・きっと僕たちはまた巡り会えるって!もう一度、出会えるって!!・・・あの日・・・僕に君が言ってくれた言葉を・・・言葉を信じているから!・・・ずっと信じているから!!!」

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