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無題

2002年10月6日 サイト初掲載作品
原作『サイボーグ戦士 誰がために戦う』篇より

「あまり無理しちゃ、駄目だよ・・・年なんだからさ!」
「はは・・・面目ない!・・・ま、どっちにしろ上手くまとまったんだから、『終わり良ければ全て良し!』って事で今回は勘弁しといてくれ、ピュンマ」

傷だらけの顔を僅かに歪ませながら力なく笑うグレートに、ピュンマはやれやれと両手を広げて天を仰いだ。
そんなピュンマの背後から、ジェロニモがその大きい図体とは似遣わぬ丁寧な仕草で、ベッドから半身を起こしたグレートに番茶を差し出す。

「・・・酔い覚ましには番茶が効くそうだ・・・」
「おお!!こいつは有り難い!さすがジェロニモ、気が利くねぇ〜♪」

役者仕込みの大袈裟なオーバーアクションで番茶を受け取りながら、ずずっと番茶を口に流し込むグレート。
一息で番茶を呑み込んだ後、さっきまでのおちゃらけた態度とは打って変わった神妙な顔つきで、呑み終えた番茶の湯飲みを両手の中で静かに廻しながらぼそりと呟く。

「・・・もし、あんたらが俺と同じ能力を持っていたら、きっと俺と同じ事をしただろうさ・・・」

言いながら普段の彼とは違う、人の本質を見抜くような鋭く凍て抜く視線でピュンマとジェロニモを交互に見つめるグレートの言葉に、ピュンマは僅かに視線を逸らし、ジェロニモは静かに瞳を閉じた。
・・・それはグレートが投げかけた言葉を無条件に納得し、きっと彼らがそうしたに違いないという断定を表す仕草に他ならなかった。

「・・・小生はジェットの気持ちも・・・アルベルトの気持ちも・・・痛いほど分かっていた。分かっていたから、どっちの肩を持つこともできなかった。それは、ピュンマ、ジェロニモ、あんた達もきっと同じ気持ちだったはずだと思う。人間のふりをしていても所詮はサイボーグ。・・・しかし、サイボーグだからこそ助け合い、支えあうことのできる本当の人間としての心の触れ合いを大切にしたかったのさ。誰が欠けても小生達は生きていかれない・・・せめて・・・せめて今平和なこのひとときだけでも・・・みんな一緒に楽しく過していきたいと思うのは・・・たとえいつわりのシアワセだとしても・・・みんなが一つでいられることは・・・今の小生達にとって何よりも大切な事だと信じたい・・・」

言い切ったグレートの肩に、そっと静かにジェロニモが手を置く。
同じくピュンマもベッドの側に歩み寄った。

「・・・堪らないよな・・・グレートにこんな風に熱く言い切られちゃうと!いつものグレートらしくないけど・・・たまにはこんなグレートもいいよね!」

熱くなった目頭を軽く押さえながら微かに笑うピュンマの頭を、グレートが軽く小突く。

「『たまには』だけは余計だぞ、ピュンマ!」

「俺達は・・・幸せだ・・・支えあって生きていかれる喜びを・・・嬉しさを・・・こうして分かち合える、かけがえのない仲間が・・・仲間がいるのだから!」

一言ずつ噛み締めるように放つジェロニモの言葉が、空気中で小さな小さな雪の結晶となって、彼ら3人の心に静かに降り積もる。

触れたら壊れてしまいそうな小さく儚い雪の結晶は・・・しかし、何よりも温かく何よりも清らかで、そして何よりも強く、お互いの心に『信頼』という消せない結晶の固まりとなって息づいていくのだった。

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