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薄紅色の泪

お花見シーズン到来ですね。
まだこちらは桜の蕾が半分ほど膨らんだくらいです。

島さんとテレサの超短編です。
よろしかったらどうぞ

「……もう少し……」

こちらの気持ちを推し量りながら紡ぎ出される、
臆病で控えめな声が四月の風に溶け込む。


「もう少し、ここにいてもいいですか?」


それはまるでこちらからの返答が、あらかじめ拒否されるかもしれないという、
不安を滲ませた声音である事に気が付く。

胸の奥でじりっとした疼きが起こった。
まだ彼女の不安を完全には取り除く事が出来ずにいる、
自分の到らなさを痛感せずにはいられない。

言いようのない焦燥が襲うと同時に、
少しでも彼女の心の奥に蔓延る不安を取り除いてあげたい気持ちが、
心の中で交錯し続ける。


風に舞う薄紅色の涙にも似た桜の花片が、並んで立つ俺と君に絶え間なく降り続く。

春の風は気まぐれ。

心の奥に押し止めた不安な気持ちを煽ったかと思うと、
次の瞬間は、隠しきれない愛しい想いを擽り始める。

はらはらと舞い踊る薄紅色の涙に翻弄されながらも、
心はある一点で固まり続けていた。


……そう、それはいつまで変わる事のない、君への想い……

 

無意識に握り締めた拳の中で、焦っていた気持ちが弾け飛んで消えた。


「大丈夫。君がいたいと思うだけ、ここにいよう」


「……でも……」


その先の言葉を言いかけた彼女の声を遮って、人差し指を可憐な唇にそっと押し付ける。


彼女の不安な気持ちを掬い上げるには、自分が揺れ動いたままじゃいけないと気付いた瞬間、
無意識に伸びた指先。


「あの時、取り戻せなかった時間を、これからはずっと一緒に過ごしていけるから」

碧緑色の眸の奥で、桜の乱舞の中に佇む俺がいた。
薄紅色の花片とともに彼女の眸に映り込んだ俺の姿は、
透明な雫に包まれて、幸せを噛み締めるように彼女に向け微笑みかけていた。
 

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