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お蔭様で無事にサイト開設7周年記念を迎えることができました。
これもひとえにサイトにお立ち寄り下さる皆様があってこそと深く感謝しております。ありがとうございます。
今後もよろしくお願いいたします
過日までWeb拍手に設置していた御礼SSをこちらに載せました。
よろしかったらどうぞ
身体の隅々に蔓延りまくるダルさが、今日は一段と勢いを増す。
ここ数日間、日々のリズムを狂わされっぱなしのツケが、こういう形で身体に影響を及ぼしつつある現実をジョウは殊更苦々しく想った。
「セレモニーという名の『公開ガマン大会』だったぜ、アレは;;;」
不満を口走る度に、全身の毛が逆立っていくような感覚は、ジョウの本能にかなりのダメージを与えているのは定かであった。
「金輪際、王国なんぞとは関わりたくねぇ;;;」
つい口から漏れでたジョウの本音に、敢然と立ち向かう美女がひとり。
「悪かったわねぇ、『公開ガマン大会』にお愛想で嫌々最後まで付き合ってもらって」
「ゲッ・・・!」
恐る恐る振り返ると、腰に手を当てて仁王立ちで立ち尽くすアルフィンの姿があった。
両碧から燃え立つ怒りの炎は、ジョウをじっと睨みすえたまま激しく燃え盛る。
そのあまりの迫力に、二歩三歩後ずさるジョウであったが、彼女は容赦なかった。
ジョウの目前に一歩ずつ歩み寄るアルフィンの背後に、どす黒いオーラが漂う。
ジョウを見上げながら、じりじりとにじり寄るアルフィンの柳眉が極限まで吊り上る。
「たかだか三日間位のセレモニー出席だけで音を上げるなんざ、特Aクラッシャーとしての
名が廃るわ!男だったらもっとシャンとしなさいよっ!借りてきた猫みたいに大人しくなっちゃって・・・みっともないったらありゃしない」
「む、無茶苦茶な論理だっ!!!俺はアルフィンみたいな生まれながらの王族じゃないんだぜ。
生まれも育ちもがさつなクラッシャーに、あんな御大層なセレモニーに付き合わせようとする方がよっぽど横暴だぜ。ちったぁ、こっちの事情ってもんも考慮した上で出席を要請してほしいもんだ」
「何よ!ジョウの方こそ卑怯じゃない!そうやって何でも『俺はがさつなクラッシャー育ちだから』って言い逃れするのは男らしくないわ。身分が何よ!育ちが何よ!要は人間中身が重要でしょ!?体裁ばかり取り繕ってる奴ほど、ろくなもんじゃないわよ。男ならもっと自分自身に誇りを持ちなさいよ。そうやっていつまでも言い訳を繰り返すようじゃ、いつになっても本当の特Aクラッシャーになれっこないわ。」
アルフィンの言い様に対して、腰半ばまで上げ掛けていた拳が止まり、みるみるうちに力が抜け落ちて萎んでいく。
怒りのあまり一気に強張りかけた顔面は、アルフィンに真意を衝かれたことによって、まるで潮が引いていくかのように、怒気が空気中に霧散していく。
その様子を凝視していたアルフィンの表情に不安の波が広がる。
いつもなら怒号を撒き散らし、倍返しで言い返すジョウであるはずなのに、反撃どころか一言も漏らさぬままじっと黙りこくる彼の姿に違和感が生じる。
無意識に動いた手は、ジョウの額におずおずと触れた。
「やだジョウ。もしかして疲れが溜まりまくって熱でもあるんじゃない?どこか身体の具合でも悪いの?」
その瞬間、アルフィンの懸念はことごとく粉砕される事となる。
アルフィンの手首をグッと握り締めながら、彼女の手を額から無理矢理引き剥がしたジョウは
口元に不敵な笑みを浮かべながら、低く押し殺した声で彼女の問い掛けに答える。
眸の奥底に宿った些細なプライドの塊が、めきめきと音を立て、周りを覆っていた体裁の壁を打ち破っていく。
「今、君が俺に向けて言った言葉を、俺は一生忘れない。アルフィン、これからの俺がどう変わっていくかしっかりとその眼に焼き付けておくんだ。いいか、忘れるなよ!」
先程までとは別人のように、威圧的な風情でアルフィンを見据えるジョウの眼から放たれる本気にアルフィンは思わず息を呑んだ。
ぞくりと背筋を駆け上がっていく寒気とは別に、心がギュッと締め付けられるような感覚がアルフィンを同時に襲う。
ジョウが隠し持っていた、真意を図らずも垣間見て・・・アルフィンの心に訪れ始めた変化。
ただ『好き』という感情だけでは片付けられない、『何か』が彼女の心にたった今、根付き始めた。
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