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2年ぶりのSSです。 次のSS更新は二年後か?
映画版で自分が一番お気に入りのシーンをアレンジしました。
若干、映画版との剥離がありますが、そこはお見逃しを(汗)
ジョウとアルフィンはラブラブよりも、恋人未満でお互いじれったい位に葛藤しているのが大好きな私です。
*****
漏れ落ちた吐息に込められた安堵の念。
一つ息を零す度に、硬いシートに沈み込んでいく背中。
度重なる衝撃の影響で張り詰めたままだった身体が、ようやくゆるゆると弛緩していくのに気づいて
私は崩れ行く意識を手放し掛けていた。
両隣で交わされる会話に聞き耳すら立てられず、ただひたすら身体を横たえているだけで精一杯の
私の額にそっと載せられたタオル。
ひやっとした感触が心地いいのに気がついて、全身が潤いを求めていたのだと頭の片隅でおぼろげに察した。
額から身体の隅々へと少しずつ行き渡っていく穏やかな感覚に身を任せながら、
より深い安堵感に寄り添おうとした瞬間に届いた声が、少しだけ私の意識を浮上させかける。
「しかし・・・・・・気になるなぁ」
私の意識にこの世で一番訴えかける声が耳元で優しく響く。
いつ、どこで、何をしていても、その声が届くたびに即座に反応してしまう意識を止められない。
幾千幾万の愛の言葉を他の誰かから絶え間なく囁かれてとしても、「アルフィン!」って私の名を呼ぶ、そのたった一声には敵わない。
敵うわけがない。
出逢った瞬間から、ずっと今まで変わることなく想い続けてきた気持ちに嘘はない。
貴方がいてくれたからこそ、何とかここまで辿りつけて来たのも事実。
照れ屋で恥ずかしがりやで、おまけに恋心に滅法疎い貴方だから、この瞬間だけ少しだけ・・・・・・ほんの少しだけ
貴方のさり気ない優しさが欲しいって言ったら、聞き届けてくれる?
少しだけ・・・・・ほんの少しだけでいいの。
夢を見させて。
一時の儚い幻でもいいの。
紛れもなく貴方が私の傍にいるって感じさせてくれる、そんな他愛もない密かな願いを
どうか今この瞬間だけは聞き届けて。
胸の中の切実な願いとは裏腹に、残酷な現実の前で私の心はいつも立ち止まったままだった。
今までは。
何百回も心の内で繰り返した想定を、今回もまたあっさりと打ち砕くであろう現実に願いが埋没しかけた、その時だった。
微かに震える指先が、額に掛かっていた乱れた前髪を優しい手つきで直していく。
ゆっくりとスローモーションのように、柔らかく移動していく指先には、何とも言えない温かな気持ちが宿っている気がした。
まるでそれは心からの慈しみを表すかのように、緩やかに動いては乱れた髪をそっと直していく。
胸に秘めた想いに気づいているかのように、私の心に寄り添うように動く指先が、やがて襟元でそっと落ち着いた。
躊躇いもせず、ごく自然に置かれた指先から放たれる、微かな鼓動。
そこに行き着くのが当然だと言わんばかりに、優しく置かれた手から伝わる重みと暖かさ。
その心地よさに、何とも言えない感情に埋め尽くされて、閉じたままだった瞼をそっと開く。
ぼやけた視界に映りこんだのは・・・・・・僅かに頬を染めながらマグカップのコーヒーを啜っている、あの人の横顔だった。
・・・・・これは、夢じゃなかったの?
まだ半信半疑の気持ちを抑えられず、襟元に置かれている指先に微かに頬を寄せた。
この現実が夢じゃないんだと、確信を持つために。
そしてこの夢が逃げないようにと。
無骨な指先から伝わる、不器用な想いが私の心を瞬時に満たしていく。
夢で何度となく願った瞬間が、今現実に起こっている事実に心が抑えきれなくなりそうで。
・・・・・・ジョウ、大好きよ。心から。
胸の内から溢れ出る想いを言葉に載せる代わりに、襟元に置かれたままの指先の感触を心と身体に刻み付けて、幸せに包まれた吐息を一つだけ零した。
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