２００３年５月７日　サイト初掲載作品

・・・いつからだろう？
人から何か話し掛けられる度に、強ばった笑顔で受け答えする自分に気付き始めたのは・・・

笑っていることでその場が丸く収まるなら・・・
笑っていることで他人（ひと）には言えない哀しみを心の中で押し殺せるなら・・・
笑っていることで他人（ひと）に踏み込まれないように
自分の心をカモフラージュしてしまえば・・・

歪んでいく心のバランスを修復できないまま・・・
ボロボロと崩れ落ちていくだけの魂の抜け殻


『００９・・・本当の微笑みを忘れてしまうほど・・・ずっと・・・ずっと自分を押し殺して・・・小さかった頃の貴方は頑張っていたのね』


彼女の頬を伝う涙の中に隠された心が・・・僕を混乱させる

何故・・・？
何故・・・君は僕のことで泣けるの？
出会ったばかりの君は・・・どうして僕のことなんかで涙を流せるの？
僕は・・・僕は涙を流してもらえるような人間じゃない


『どうしてお前は俺達のことを信用できねぇ！？俺達は仲間じゃねぇか！』


僕の肩を揺さぶりながら必死に訴える彼の瞳には・・・戸惑う僕を懸命に支えようとしている想いが漲っていた

仲間・・・仲間って何？
君達は僕のことを必要としてくれているの？
・・・どうして？


『勘違いするなよ。・・・俺達は戦闘要員としてのお前が必要な訳じゃない』


・・・何故、君達には僕が必要なの？
僕は・・・僕は君達に必要とされるような人間じゃない！


『００９・・・お前の心は泣いている・・・助けてほしいと泣いている・・・』


・・・違う・・・！違う！違う！！
僕は誰かに助けて欲しいわけじゃない！


『もっと素直になったら如何かね？・・・人間、素直が一番大事♪』


僕は・・・僕は・・・僕は・・・！


『苦しいことも辛いこともひとりで抱え込まないことアルね！００９・・・あんさんは嫌がるかもしれないアルが、あんたの悩みはみんなの悩みでもアル。思い切って肩の力抜いてみるがヨロシ！』

何故・・・僕にそんな優しい言葉を掛けられる？
どうして？・・・どうして？！


『みんな同じだからだよ。みんな君と同じで抱えきれない苦しみを持っているから・・・だから君のことをほっておけないんだよ』


・・・みんな苦しんでる・・・？
・・・僕ひとりじゃない・・・？


『００９・・・君ガイツカ僕タチニ心ヲ開クソノ時マデ・・・僕達ハイツマデモ待チ続ケテイルヨ・・・。仲間ダカラ・・・カケガエノナイ僕達ノ大切ナ仲間ダカラ！』


心を失いかけた僕に届いた・・・汚れなき魂が宿った言葉の滴。
みんなの想いを受け取った僕の心に静かに灯り始めた灯火。

俯いていた顔を上げた先にはきっと・・・きっと・・・！

みんなの元へと歩き始めた僕の足元を一際明るい陽射しが照らし出す。

いつまでも・・・どこまでも・・・