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2005年2月27日 サイト初掲載作品
先日UPした作品の後日談ぽいエピソードのお話です
コト・・・コト・・・コトリ・・・。
少し深めのミルクパンの中で奏でられる、幸せ色のハーモニー。
大きめに切られた彩(いろどり)豊かな野菜達がお肉やスープと馴染みあいながら野菜本来の甘みを充分に溶け込ませていく。
コト・・・コト・・・コトリ・・・。
野菜がミルクパンの中で少しずつ煮崩れていく音は『暖かな調べ』となり、ミルクパンから漏れ出るまろやかな匂いと共にキッチンを安らぎの場所へと変えていく。
貴方の帰りを待ち侘びながら、そっとミルクパンの中をかき混ぜる度に、幸せへの礎を築き上げていく気持ちが知らず知らずのうちに溢れ出しそうになる。
『君が作ってくれる食事はどれも美味しいけれど・・・このクリームシチューは格別に美味しい!もし良かったら・・・その・・・また作ってくれるかな?・・・僕の・・・僕だけの為に・・・』
あの日から貴方と私の間で、一介のメニューから特別なメニューへと変化したクリームシチュー。
貴方が長期間の任務で家を離れて、ようやく帰宅できた日の夕食のメニューは自然とクリームシチューが食卓に並ぶようになった。
早く・・・早く逢いたい・・・。
ミルクパンの中で野菜同士がぶつかり合う音は、まるで私の胸の内を代弁してくれるかのように
時折激しさを増す。
何度も何度も時計を見上げる度に、いつもと違って針の歩みを異様に遅く感じるのは・・・貴方の帰りを待ち切れない心の裏返し。
無事に帰ってきてくれるのが何より一番大切だと分かってはいても・・・貴方の優しい笑顔を見た瞬間にポロポロと崩れ落ちていきそうな気持ちに嘘はつけない。
逢いたい・・・島さん、早く貴方に逢いたいです・・・!
自分勝手に先走っていきそうになる心を静めようと無意識に触れた『モノ』が、不安定に揺れ動くままだった心を見る見るうちに落ち着かせていく。
ガラスに閉じ込められたプリムラの花のペンダントトップ。
・・・貴方と私の心を繋ぎ合わせたプリムラが一番最初に咲かせたくれた、この世で一番美しく貴い花。
その花に・・・貴方の優しい笑顔が重なる。
『・・・待っていて。・・・もうすぐ逢えるから・・・!』
貴方の穏やかな声が、そのプリムラの花が閉じ込められたペンダントトップから聞こえてきたように思えて・・・咄嗟に両手でペンダントトップを包み込んだ瞬間、はっきりとした音が玄関の方角からキッチンを駆け抜けた。
「ただいま、テレサ。・・・遅くなってゴメン」
眸から零れ落ち続ける泪は、玄関へと向かう私の足元にキラキラとした結晶の塊の華を咲かせ続ける。
コト・・・コト・・・コトリ・・・。
キッチンの中で静かに溢れ出し続ける音は・・・
優しくて温かい真心の隠し味が効いた・・・二人の心が奏でるとっておきの恋のハーモニー。
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