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2005年10月21日サイト初掲載作品
限界を超えて目一杯廻しきった発条がミシミシと鈍い音を響かせる。
抵抗する指先をまるで抉り取るような勢いで廻りだした発条の軋みは、徐々に身体全体に波及していく。
発条の為すがままにいたぶられるだけの指先は、次第に『痛み』という感覚さえ奪い去られていくようで・・・不意に切なくなる。
沈み込んでいく心とは裏腹に軽やかに響きだしたオルゴールの、この上なく美しく、そして哀しい旋律に重なる面影。
愛しくて・・・。
どんなに時間が経とうとも・・・愛しさはただただ募るばかりで。
時間の経過に逆らうように、ますます深くなっていく想いに歯止めなど一切効かず。
否、歯止めを効かすことすらも放棄して、ただひたすらに想い焦がれる気持ちだけを追い求め、彷徨い歩いてきた道程。
過ぎ行く時の流れに逆行するかのように、君だけをずっと愛し続けると決めた心は・・・ゆっくりと音を響かせながら廻り続ける発条を無意識に押し留めている自身の指先とダブる。
指先に食い込む痛みにいつしか慣れていくように、俺もいつか君の事を遠く感じてしまう日が来るのだろうか?
・・・いや、そんなことなどありえない。
この指先に・・・この身体に・・・
今もなお、俺と一緒に生き続けている君の命(想い)を感じ続ける限り・・・
君への想いが薄らいでいくことなど、決してあるものか!
次第に途切れていく、微かな音の欠片。
勢いよく廻っていた発条もやがて最後の一節を残し・・・佇む時の中に沈んだ。
感覚を失っていた指先に徐々に篭っていく熱く、揺ぎない確かな温もり。
それこそが君を生涯愛し続ける俺の心からの気持ちと悟った瞬間・・・暮れゆく空の果てで星がひとつ煌いた。
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