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島&テレサ 第16話より
このお話は、第24話のテレサが島さんに輸血を行っているシーンでの、テレサが島さんの手を頬に這わせているシーンに繋がっています。
私の髪に何度も何度も頬擦りを繰り返す貴方。
私の事を心から慈しんでいるような、穏やかで優しい仕草に、ずっと縋り付いてしまいたくなる。
……このまま、ずっと時が止まってくれたら……
……だけど……
……もう……
心の中で葛藤している自分を強引に説き伏せて、貴方をヤマトへと送り届ける使命の一歩を踏み出す。
「……島さん……」
抱かれた胸の中で、想い人の名を呼ぶと一瞬だけ腕の力が緩んだ。
「テレサ……?」
柔らかな声が耳に染み通る。
貴方の声で名を呼ばれると、心に秘めた決意がぐらついてしまうから……
貴方からの問い掛けを遮るようにして、私はそれがある場所へと小走りで駆け寄った。
「貴方の帰りを一刻も早く待ち望んでいる人達がいます。すぐに戻らなくては」
言いながら、床に転がっているヘルメットを拾い上げ、貴方の胸元にそっと差し出す。
震えている指先を貴方に気付かれぬよう、ヘルメットの陰に隠したままで。
「ありがとう、テレサ」
私から貴方へとヘルメットを手渡した瞬間、予期せぬ出来事が私に降り懸かった。
「僕のわがままで君を泣かせてしまって、ゴメン。もう二度と哀しい想いをさせないから」
受け取ったヘルメットを小脇に抱えたまま、左手の手袋を器用に外した貴方は、まだ涙の跡が乾かない私の頬に、そっと左手を這わしながら親指の腹で涙を拭い取った。
「……!……」
……胸が痛い……
どうして!?
どうして貴方は、こんなにも……!?
貴方の尽きぬことのない優しさに、私の心は張り裂けそうになる。
島さん!
島さん!!
再び涙が溢れ出しそうになる私の頬に左手を這わせたまま、島さんは再び私を胸の中に抱き寄せ、力強く抱きしめるのだった。
「これからはずっと君の側にいる。二度と君一人にはしない!」
島さんが呻くように呟いた言葉の欠片は、私の胸の中で哀しみと思慕の雨を絶え間なく降らせ続けるのだった。
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