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2003年5月30日サイト初掲載作品
「あと4日もしたら白色彗星はこの空間に達する。あの発光ガス帯に吸い込まれてしまう。テレサ・・・僕は君を見殺しになんかできない!」
「・・・!」
島さんの言葉が耳に届いた瞬間に、固く閉じていた瞼が思わず開いた。
コトッ・・・。
私の胸の奥で何かが音を立てて崩れていく。
島さんの切迫した声が部屋の中に響くたびに、何かが私の身体に深く染み込んでいく。
『君を見殺しになんかできない!』
・・・いいえ!
私はこの星を破滅へと導いてしまった人間です。
罪のない人々を己の予期せぬ力で死に至らしめてしまった私に・・・
貴方はどうしてそんな優しい言葉を投げかけてくださるの?
私は私は・・・その言葉を受け止める資格がない人間なのです・・・
お願いだから優しくしないでください・・・
「ヤマトへ一緒に行きましょう。そしてみんなと一緒に考えましょう!」
必死に説得する島さんの声が私の心に小さな小波を起こし始める。
一刻の猶予も許されない状況であることは島さんも、そして私も分かっていた。
島さんが私のことを心配なさってくれているのだと、私に向かって話す緊迫した声の様子から感じ取って次第に少しずつ揺れ動いていく気持ち。
・・・でも・・・私は・・・!
「私は行きたくありません」
私の隣で腰を屈めて同じ目線で話し掛ける島さんの、私を見つめている真剣な眼差しに耐えられず、私は瞼を固く閉じたまま言葉を紡いだ。
胸の奥から絞り出した声はかすかに震えていたと・・・私も気が付いていた。
島さんに対して強く言い切ることで自分自身の揺れ動いている気持ちを抑えたかったから・・・
いいえ!違う!!
これ以上島さんに優しい言葉を掛けられたらずっと・・・ずっと今まで自らに課していた厳しい戒めを解いてしまいそうになる自分自身に気が付き始めていたから・・・だから私は・・・!
「・・・いいんですね」
最終確認を取るように静かに呟いた島さんが私の隣で屈んでいた腰をゆっくりと上げたのを気配で感じ取った私の心に深く鋭い棘が刺さった。
それは今まで感じたことないくらいに・・・激しくて・・・切なくて・・・痛いものだった。
「・・・じゃ、僕はこれで」
私に背を向け歩き出そうとする島さんの背中がだんだんと私から遠ざかっていこうとしている。
私の視界から消え去ろうとする島さんの後姿に・・・懸命に心に歯止めを掛けていた箍が一瞬のうちに外れた。
その瞬間だった。
想いも寄らない言葉が無意識のうちに私の口から自然に放たれていった。
「島さん」
私の呼びかけに背中を向けたまま立ち止まった島さんに、追い縋るように言葉が口をついて出て行く。
「やはり貴方も・・・行ってしまうのですね・・・」
言うつもりのなかった言葉がスルスルと出てしまったことに戸惑いを隠せない私。
自分自身でも把握しきれないほどの心の動揺が激しく私を揺り動かす。
・・・どうして?
・・・何故?
畳み掛けるように私に襲い掛かる自問自答の嵐に答えを見つけ出そうとするけれど、入り込めば入り込むほど時の迷宮に流されていくような錯覚に陥る。
ただ一つ分かっていることは・・・島さんと初めて出会ってから私の中の何かが変わり始めているということだけ・・・
私の問いかけに背中を向けて黙ったままだった島さんがゆっくりと振り返ったとき、混乱している私の思考がピタッと止まった。
凛々しく威厳に満ちた想いを瞳の中に力強く映し込んだ島さんの表情に・・・私は掛ける言葉を失った。
・・・そう、それはたぶん・・・
そうなると最初から分かりきっていたはずだったのに・・・
島さんが話す前から、彼ならそうするであろうと想定していた答えが私の心に影を落とす。
「僕は・・・ヤマトの乗組員です!」
何の躊躇もしないできっぱりと言い切った島さんの顔には戦士としての誇りとヤマトを仲間と共に支えているという自信と、そして愛する地球のために戦い抜くという確固たる意思が漲っていた。
島さん本人の口からはっきりと告げられた答えに私の心は想像以上に激しく揺れ動いていた。
・・・分かっていたはずだった
・・・島さんならきっとこう答えるはずだと・・・
私は分かっていたはずだった・・・
・・・なのにどうして聞かずにおれなかったの?
・・・なのにどうしてこんなに心が痛むの?
・・・私は・・・私は・・・一体どうしてしまったの・・・?
立ち去る島さんの背中を虚ろな瞳で見送る私の心にいつしか雨が降り始めた・・・
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