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復活のとき

2003年11月23日サイト初掲載

袖を通した瞬間に蘇ってくる、あの何ともいえない高揚感がジョウの身体を瞬時に包み込む。
身体の内側から沸々と漲ってくる闘志は、長い入院生活で鈍っていたジョウの意識を徐々に特Aクラスのクラッシャーのそれへと蘇らせていく。
長い闘病生活で失いかけていたクラッシャーとしての勘と誇りは今、この瞬間を境にして再びジョウの身体に宿りつつあった。
痺れる様な鋭い感覚が身体全体に俄かに起こり始め、頭から足のつま先までを全部埋め尽くすような心地よい緊張感が自分が根っからのクラッシャーであることを改めて思い知らせてくれるようで、知らず知らずのうちに握り締めていた両の拳。
フッと軽く一つ深呼吸すると、ジョウは腰掛けていたベッドの上からゆっくりと立ち上がり壁にかけてある鏡の前に視線を合わせた。

俺は・・・俺は・・・クラッシャージョウなんだ・・・!

自らに暗示をかけるように鏡の中の自分と対面したジョウは口の端を小さく噛み締めながら己を見詰め続けていた。
長い闘病生活ですっかりと抜け落ちてしまった鋭さと強かさを取り戻すかのようにじっと鏡を見詰め続けるジョウの表情が僅かに変化し始める。

生気が失われかけていた瞳が少しずつ強く鋼のような意思と研ぎ澄まされた意識によって気高く凛とした想いを秘めた情熱の色に塗り替えられていく。
ぎりっと噛み締めた奥歯の音がぼんやりとしていた頭の中を駆け巡って、鮮明ではっきりとした意識へとだんだんにシフトしていく。

長年クラッシャーとして培われてきた鋭い感覚が全身に行き渡っていくのを感じつつ、ジョウはそっと鏡から視線を外した。
それと同時に病室のドアが勢いよく開き、見慣れた色のクラッシュジャケットがジョウの前に3つ並ぶ。

「ジョウ!」
「兄貴っ♪」

ほぼ同時に飛び出した二つの声がシンクロしてジョウの耳に届く。
二つの声に一歩遅れるようにして届いた『フッ』という低く重厚な溜息にはいつもと違って感慨深いような想いが込められているようにジョウは感じた。

「・・・待たせたな・・・」

微かに上擦ったような声がジョウの口から零れたと同時に長かったチームリーダーの不在の瞬間が一瞬にして幕を閉じて終わった。

「・・・行くぞ!」

歩き出し始めたジョウの後を追うようにして一歩を踏み出した彼らの行く手には冷ややかなクリスの嘲笑が待ち構えているのだった。

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