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必然への予兆

原作第一巻のあるシーンをモチーフとした短編です。

「見事な手際だ。感心したぜ」

ふと口をついて出た言葉は、何気ないものだった。
ここぞという時に周囲の空気を圧倒させる気品と風格は、どんな理論や行動でも太刀打ちできないほどの説得力に値する。

アルフィンと一緒に行動している内に、いつの間にか忘れかけていた現実がジョウの胸を過ぎる。


・・・そう、彼女は王女。
気高く、美しいピザンの王女・・・プリンセス・アルフィン。

・・・あの時、救難信号をキャッチしなければ、おそらく彼女とは一生出逢える機会もないままで。


「あたくしも、いいクラッシャーになれそうですか?」

凛とした声がジョウの意識に問い掛ける。
真顔で訊ねるアルフィンの蒼い眸は、どこまでも澄み切ったスカイブルーを思わせた。

・・・大いなる自由を求め、無限の可能性を信じ、どこまでも続く理想へと繋がる空の色。

希望に満ちた空の色に憧れ続けて、俺はずっと・・・。


アルフィンの蒼い眸と、自分の想いが重なったのは・・・偶然なのか、それとも。

「まあね」

躊躇しながら答えたジョウの胸の内をアルフィンは知らない。
・・・そしてその一言が、アルフィンの意識を決定付ける一言であったと、その時ジョウは知る由もなく。

偶然から必然へと昇華されていく状況は、この時既に運命付けられていた。

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