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発展途上の君だから

2005年1月25日

・・・あの瞬間・・・
鋭く尖った言葉の切れ端が私の身体を貫いたとき・・・
目に見えない心の奥底で『何か』が音を崩れ落ちていくのが分かった。


『わたしには背伸びしているようにしか見えないな・・・』


その美しい顔におぞましいほどの狂気が滲んだ冷笑を浮かべつつ、私を見下ろしながら言い放ったクリスの言葉。
言い返すよりも先に、自分の手が無意識のうちにクリス目掛けて飛んだのは・・・
一番認めたくなかった本当の自分の気持ちを抉り取られて、言葉によって晒され、目の前に突きつけられたせいに違いなかった。

自分で敢えて見て見ぬフリをして、必死に隠し通そうとした気持ちが強大なエスパーであるクリスによって暴かれた衝撃に抵抗できる術は、それ以上自分の気持ちを見抜かれまいとして素手で挑みかかるしかなかった。
意識を経由せずに本能から直接放たれた行動だということが・・・
自分自身の一番弱い部分を突付かれたという、何よりの実証になってしまったと気付いたのは・・・
全てが終わってからのことだった。

*****

「・・・アルフィン、ボーっとするな!」

ジョウの劈くような声がコックピット内に刺々しく響き渡る。
ワープアウト終了直後の一番重要な時間帯に少しだけ意識が削がれていたアルフィンを、ジョウの一声が律した。

「は・・・はい!ごめんなさいっっ!!!」

慌てて軌道の確認とデータの調整を読み取るアルフィンに情け容赦ないジョウの言葉が飛ぶ。

「ワープアウト終了直後が一番事故が起きやすい時間帯だってことを、忘れたのか!?」
「・・・」
「・・・兄貴・・・もうちょっとさぁ・・・優しい言い方があるんじゃないのかい?」

緊迫した空気を宥める感じでリッキーが恐る恐る発する言葉に同調するようなジョウではなかった。
・・・そう、彼は・・・特Aランクの地位を常に保ち続けるクラッシャ−ジョウチームを率いる若きチームリーダーなのだから。

「・・・リッキー。一時の気の緩みが生と死を分かつ重要なポイントだってことを、俺はお前に何度も口を酸っぱくして言い続けて来たつもりだ。俺に反論するのであれば・・・今すぐここでミネルバから降りろ。クラッシャーとしての自覚がない奴は俺のチームには必要ない」
「・・・兄貴・・・」

顔面蒼白になって口を閉ざしたまま、リッキーは前の座席のタロスに向けて縋るような視線をぶつけた。
しかしタロスはその視線を一切受け付けないような厳しい背中で彼の視線に答えるだけだった・・・が、黙ったままリッキーに対して向けられている厳つい背中には

『リッキー。口惜しかったら、早くお前も俺の手を煩わせないような一人前の立派なクラッシャーになってみやがれ』

という無言の励ましが刻み込まれていた。
緊迫した空間を掻い潜るようにしてリッキーに向けて発せられるタロスらしい励ましに、リッキーの目元が微かに潤む。
鼻の奥がツーンとして泣きそうになっているのを悟られないように、わざと大袈裟なアクションで鼻を啜るリッキーの仕草を背後から感じ取って・・・タロスは操縦桿を握りながらニヤリと口の端を動かした。

「・・・ジョウ。それはリッキーではなくて私に向けて言った言葉・・・なんでしょ?」

リッキーとタロスの無言の掛け合いの一方で、ジョウとアルフィンの二人に漂う不穏な空気がミネルバのコックピット内に漂いはじめる。
張り詰めた緊張の糸に次第に余裕がなくなりはじめて、ふとした瞬間にプツンと切れそうな予感が周囲を蔽いつくそうとしていた。

『タロスぅ〜;;;一体どうすんだよぉ〜〜〜;;;』

困りきった表情で前を向いたままのタロスの背中に何度も肘鉄を喰らわすリッキーに、振り向きざま彼の頭を軽く小突くタロスの眸はいつになく優しい眸をしていた。

『・・・黙って見てろ・・・』

アイコンタクトでそう自分に話し掛けるタロスに半信半疑の目を向けながら、リッキーは大人しく事の成り行きを見守ろうとするポジションに身を置いた。

「そういう自覚があるのなら、何故もっとしっかりと神経を集中させない?!さっきも言ったはずだ。ちょっとした気の緩みが命取りになると・・・!」
「それ位、私にも分かるわ!いつも自分なりに一所懸命やっているつもりなのよ・・・。だけど・・・だけどすぐには対応し切れなくて、いっつもジョウ達に迷惑を掛けてばかりで・・・。そんな自分が歯痒くて口惜しくて仕方ないのよ!私だってもっとジョウ達の役に立ちたいの!クラッシャージョウチームの一員として恥ずかしくない、立派なクラッシャーになりたいの・・・!でも・・・でもいつも貴方達に迷惑を掛けてしまうのよ・・・。分かってるの。本当は自分がクラッシャーには向いていない人間だって。チームの中で足手纏いにしかならない存在だって・・・だけど・・・だけど私は・・・!」

声にならない嗚咽が喉の奥に詰まって、言葉の続きが紡ぎ出せなくなる。
泪を拭おうともせずにただしゃくり上げて泣きつづけるだけのアルフィンに助け船を出したのは意外な人物だった。

「・・・ようやく胸の中に溜め込んでいた想いが全部吐き出たようだな・・・」

先程の口調とは打って変わった落ち着いたジョウの声が響く。
ジョウのその言葉を聞いて呆気に取られていたリッキーがすかさずタロスの胸倉を掴む。
タロスはわざとそっぽを向いて軽く唇を尖らしながら、惚けたような仕草で口笛を吹く真似をした。

『・・・最初ッから、こうなる予定だって分かってて、わざと俺に黙ってたのかよぉ〜〜〜!!!』

リッキーの無言の叫びがコックピットの中を虚しく彷徨う。


「・・・アルフィン。クラッシャーにとって一番大切なのは今の自分の実力をありのまま受け容れて、そこから先は自分がどうすればいいのかを、苦しみながらも自分自身の力で乗り越えていくこと、それこそが大切なんだ。背伸びして自分を格好よく見せようとするよりも、ありのままの自分を受け止めてどん底から少しずつでも前進していくことが・・・自分自身を成長させる為に何より必要なことで・・・ひいてはそれがクラッシャーとして一人前になっていく唯一の方法だ」

ジョウの厳しさの中に秘めた不器用な優しさが傷つくだけだったアルフィンの心の深淵に触れた。
思わず泪が溢れだしそうになるのを堪えて、アルフィンはグッと握り締めた拳で泪を拭い去った。

「・・・今に見てなさい!貴方達もびっくりする位のクラッシャーに・・・いつか必ずなってみせるから!」

とびきりの笑顔で決意を新たにするアルフィンに仲間達の暖かな想いが降り注ぐ。

「上等だ!それでこそクラッシャージョウチームの一員だぜ!」

吹っ切れた想いと共に見つけた新たなる目標の元で・・・また一つ強い絆がジョウのチームに加わった。

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