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蒼との邂逅

2005年3月16日 サイト初掲載作品

「・・・どれを選ぶ?」

自分に対して、普段はあまり話し掛けることなどしない父親が僅かに漏らした言葉。
その言葉を自分に向けて発した父の顔が、何故かその一瞬だけは柔和な色を滲ませているのに気付いて、ジョウの胸の内を微かな違和感が過ぎる。


・・・親父のこんな表情・・・今まで見たことない。


厳つい面持ちの父の顔に刻み込まれた皺には、数々の苦難と試練を乗り越えてきたオトナの男としての誇りと、銀河系随一と噂されるクラッシャーのチームを率いるというチームリーダとしての責任、そしてどんな困難な仕事もその卓越したチームワークと信頼で切り抜けてきたという内から漲る自信が、はっきりと滲み出ていた。
そんな父の顔を見るたびに、どことなく素直な気持ちになれない自分自身を、ジョウは分かっていた。

全てにおいてパーフェクトとも言い切れる父の背中を見ながら育ってきた自分は、本来なら
尊敬と憧憬の念を抱いた真っ直ぐな気持ちの少年であるべきなのだろう。
いや、そうでなければならないと、半ば強要にも似た気持ちを自分に押し付ける周りの人間達に対し、ジョウはこの歳にして既に辟易してしまっていた。
開き直って「仰るとおりです。父は本当に立派です。自分はこんな父を持つことが出来てとても幸せです」と言えるほど、まだ人生を達観した訳でもなく。
・・・かといって、偉大な父という存在のプレッシャーから逃れようと、悪ぶって徹底的にグレるのも周囲の大方の予想の範疇にあると、なまじっか知っていたばかりにグレる機会をことごとく逸してしまったから、今更そうする訳にもいかず。
中途半端な気持ちのままの自分に訪れた出来事は、今までの自分の人生を覆してしまうほどの衝撃と予想もしなかった転機をもたらした。

とはいえ、唯一の肉親である父を多少疎んじてはいてもやっぱり血の繋がった親子であるから、重傷を負った父を救うことに全身全霊を傾けて精一杯対処した(つもりの)自分は・・・
間違いなく父の息子であり、血は争えないと実感したのも本当で。
こうして自分がこの世に存在しているという揺ぎ無い事実の前では、どんなに足掻いたりまたは歯向かってみても、父の存在を自分自身の胸の内から全て掻き消すことなど到底無理だと分かった時から・・・クラッシャーという仕事に対しての興味が湧き上がり始めてきて。

いつか自分は父を超えるクラッシャーになってみせる!とはっきりと決意を決めたのは、重傷を負った父がようやく退院を迎えた、その日だった。

*****

退院した父はそのまま真っ直ぐ家に向かうものだと思っていたジョウの予想は、見事に裏切られる結果となる。
家とは反対方向の道をひた走るエアカーが辿り着いた場所は、ジョウの心をある種の緊張と
ドキドキする高揚感でびっしりと埋め尽くしていく。

「・・・お前の家(ふね)だ」

まだよろめきながら歩く父がピシッと背筋を伸ばして指し示した先には、一目でそれとわかる船が宇宙港の片隅にある倉庫の中で佇んでいた。
銀色の光沢を放つその船は、まるで主の登場を待ち侘びているかのように周囲にどっしりとした威圧感を漂わせつつ、美しいフォルムを持して厳かに佇んでいた。

「・・・これが・・・俺の・・・船?」

上擦って上手く言葉が紡げないジョウを見下ろしながら、ダンは低く重厚な声で続ける。

「標準的な装備のままにしてあるから、後はお前やチームの連中が使い勝手がいいように改造するんだな」
「!・・・俺のチームって・・・まさか!」

ダンが放った言葉の意味を理解しようとするジョウの意識は、空中に向かって弾け飛んで霧散していく。
飛び散った言葉の断片を必死に掴み取って、繋ぎ合わせて理解しようとするジョウの思考はあえなく徒労に終わった。
なぜなら・・・

「命知らずの2名が、是非ともお前のチームに入れて欲しいと私に直訴してきたものでな」

ダンの背後にいつの間にか忍び寄っていた影を見て、ジョウの意識が一瞬にして凍りつく。

「タロス・・・!ガンビーノ!!お前達・・・一体っ!」
「へへっ。実は一昨日付けでクラッシャーダンチームを正当な理由なくクビになっちまいましてねぇ〜。ダンのオヤッサンに『不当解雇だ!』って異議申し立てをしましたら、あっしらの厖大な退職金並びに今後の就職先は、ジョウが一切合財面倒看てくれるって言われたもんで!」

ニヤリと薄笑いを浮かべるタロスの小憎らしいまでの表情は、ジョウに焦りとかつて経験したことがないほどの緊張を誘った。


・・・まさか・・・!


そう思い至る寸前で、すかさずガンビーノから放たれた止めの一発がジョウの意識を粉々に粉砕する。

「ジョウ。あんたには今後この老いぼれ爺とサイボーグの出来損ないの面倒を看る義務が発生したっちゅう訳だから、ま、そこんとこ宜しく頼むわい!お若いチームリーダさんよ」

嬉しさの影で、一切の事情全てがダンのお膳立てで成り立っていることに、ジョウの反発心がムクムクと湧き上がっていく。
父の敷いたレールの上を無意識のうちに歩かされているような感覚は、ジョウの闘争心を瞬く間に煽っていく。
留まることを知らない怒りの矛先は、必然的に父親であるダンへと向けられた。

「・・・俺が素直に親父の言うことを聞くはず・・・って、思っているとしたら甘いぜ!」

ジョウにしては精一杯の強がりを、それこそここぞとばかりに凄みを効かせて言い放ったものの・・・
数々の修羅場を潜り抜けてきた父親相手に端っから通用するはずもなく。
そもそも10歳という年齢で父親相手に啖呵を切らねばいけない状況に、いささか疑問を覚えつつも、今更引っ込みがつかなくて勢いのままに言うに任せてしまったとあっては、後には引けない状況だった訳で。

「・・・来い!」

真っ赤な顔で自分に猛抗議を展開している息子を涼しい顔で見下ろしながら、ダンは有無を言わさずジョウの右腕を引っ張り上げて、ズンズンと船の中へと入り込んだ。

「・・・離せ!離せよぉ〜!」

余裕綽々でまるで赤子の手を捻るかのように、バタバタと暴れもがきまくる息子の動きを一切封じ込めて颯爽と歩くダンの後ろ姿を見つめながら・・・溜息にも似た声が漏れた。

「・・・引退するには・・・まだ早すぎるぜ、オヤッサンは;;;」

呻くように呟くタロスの戯言を聞き流しながら、ガンビーノはあっけらかんと言い放つのだった。

「ほんじゃ、お前さんの退職金は全部ワシがジョウから頂いておくから、お前さんはこれからは安心してアラミスで余生を暮らすんじゃな!」

*****

ダンにズルズルと引き摺られるようにして惨めな醜態を晒しながら辿り着いた部屋は、壁一面がクローゼットという見るからに壮観な一室だった。

「・・・どれを選ぶ?」

堂々とした手付きでダンがクローゼット開閉のスイッチを押した途端に、目の前に広がった光景にジョウはしばし声を失った。
呆然としたまま声が出ないジョウの眸に、一際強い印象を放ったモノがあった。
まるで自分を選んでくれとばかりにジョウの眸に訴えかけたモノ。
そこから放たれる強い意志のようなものをジョウは胸の奥で感じ取ったのだろうか?
迷うことなく、力強くそれを掴み取ると、ジョウは大切に胸の中に抱え込んだ。
この世に生を受けた時から、自分と出逢うことを運命づけられていたような、そのモノを胸に抱え込んだ瞬間に、ジョウの胸の内を言い知れぬ感動が埋め尽くす。
そんなジョウの様子を見ながら、ダンはジョウに気付かれぬように一回だけ満足げに頷くとあくまでさり気なくジョウに尋ねた。

「・・・どうしてソレを選んだ?」

普段なら自分が選んだモノや意志に対して一切聞き返すことなどしなかったダンが、この瞬間だけは自分に理由を聞き返したことを何故か嬉しく感じながら・・・
ジョウはきっぱりと一言だけ答えた。
その眸に、希望の色と抱えきれない夢の欠片を目一杯映しこんで。


「この蒼のクラッシュジャケットに出逢う為に・・・俺はこの世に生まれてきたと思うから!」


・・・この瞬間・・・伝説のクラッシャーが一人誕生した・・・

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