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裏腹

超久し振りのCJSS更新です。
短編と言うよりも、ほとんど会話もどきです。

時期的には第7巻直後に、ジョウとバードが病院にて静養している頃です。

よろしかったらどうぞ。

「では、お先に失礼しますよ!」

晴れ晴れとした顔で、わざとらしく語り掛けるバードに向かって憎憎しげに吠える男が一人。

「目障りだッ!さっさと俺の目の前から失せろッッ!!」

ベッドから半身を起こし、手近にあった枕をバード目掛けて即座に投げ付けるも、ふてぶてしさ満載の男の前では無駄な抵抗というもの。
顔に当たる寸前で枕をキャッチしたバードは、枕を抱え直すと吠えまくるジョウの元へとわざとらしく丁寧な手付きで静かに置いた。

「お~お~、相変わらず言ってくれますな。もうそんだけ元気なら、即刻宇宙に戻っても良さそうな塩梅ですが、ま、ここはひとつ医者の言いつけを守って十分休養するんですな!」

ケラケラと笑って手を振りながら背を向けて、部屋を出て行こうとするバードに向けてジョウの罵声が炸裂する。

「俺を出し抜いて先に退院する屈辱は、一生忘れないからなッ、バード!!!」

「ま、いくらでも吠えるんですな!・・・・・・ってか、本当にアンタのチームに関わると碌なもんじゃねぇことが、今度という今度は骨身に染みて分かりましたんで」

喧嘩を吹っ掛けるような口調とは裏腹に、ジョウを見つめる目つきが穏やかである事がバードの本心を如実に表していた。
畏まって御礼の一つも素直に言い出せないジョウを思っての、敢えて喧嘩腰口調にならざるを得ない事情も重々承知の上で。
丁々発止のやり取りが出来るのは、それだけお互いが心を許しあえる者だけに与えられた特権であるが故に、言いたい放題やりたい放題できる訳で。

罵声の裏に隠れて素直に感謝の念を言い出せないジョウの心情が痛いほど分かるが故に、こちらもそれ相応の対応を返すのがクラッシャー流の儀礼。


それにしたって親父も息子も、似て欲しくないとこだけ一番似てるなんて・・・・・神様を怨むぜ、ホントによぉ!


口に出しては言えないが胸の奥深くに、ほんの僅かだけ蔓延った本音を見透かしたように脳裏に浮かんだ、ダンの何とも言い難い微妙な表情を思い浮かべて、バードはブルッと一度だけ身震いした。


・・・・・・俺ってホント損な役回り・・・・・・


しかしそう思う以上に、自分自身が彼らとの出会いを通じて数々の苦難や試練を乗り越えてきたという自負が、今の自分を支えている何より強い力の源であるのも本当で。
ドアの入り口で一旦佇んだまま、小さく深呼吸して漏らした言葉が時の谷間に沈んだ。


「・・・・・・早い復帰を願ってますぜ、アンタの退院を心待ちにしてるチームメートの為にも」


去り際に背中越しに放った言葉の向こう側で、ジョウが照れ臭そうに頭を掻き毟りながら

「・・・・・ったく、お節介野郎め!」

と小さく零した言葉を聞き逃すはずのないバードだった。

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