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手のひらに込めた真実

2003年7月24日 サイト初掲載作品

身体の内側から徐々に放出されていく、平穏という偽りに満ちた日常。
どす黒い闇を伴って入れ替わりに身体に入りこんできたゾクゾクとした緊張感を、必死に拒絶しようとする身体が、少しずつ少しずつ意思に反して苛まれていく。
そう遠くない未来・・・
忌み嫌っていたはずの戦闘に対しても、慣れ親しんでしまいそうになる精神(ココロ)が次第に自分を狂わせていくような気がして・・・
ジェロニモは虚ろな瞳のまま視線を宙に泳がせた。
戦闘に対する緊張感で小刻みに震える指先だけが、人間としての心を失わずにいられる唯一の実証であることを記憶に封じ込めながら。

「・・・時々ね・・・想うことがあるんだよ。僕らは本当はこの世に存在してはいけないモノなのかもしれない・・・って」

ピュンマが自分に対して周囲を憚るようにしながら重い口を開いたのは、009こと島村ジョーが仲間に加わり
、BGの基地から仲間とともに脱出した直後のことだった。
仲間全員が揃ったという、一種の安堵感に似た物が、生真面目なピュンマの気持ちを一瞬だけ緩めさせたのかもしれなかった。
仲間内では真面目で、何事にも前向きで、一所懸命に役目をそつなくこなす好青年なイメージの彼から出た言葉の落差に心底驚きつつも、ジェロニモは表情を変えずに彼が言うに任せた。
ピュンマは分かっていた。
己が口にした言葉を、ただ黙って受け止めてくれるだけのジェロニモのさりげない優しさに、自分は甘えているのだと。
そして、心に溜まった膿をもがき苦しみながら吐き出さなければならないほどに、自分自身が相当追い詰められていることも。

「僕達の存在ってさ・・・自然の摂理に逆らって生きているだけの人工物なんだよ。天から授かった命で、自然のままに生きたいと願う人間本来の思いを捻じ曲げられてしまった僕達は、この地球上に生きている資格なんかないんだよ!・・・死んでしまっても自然に還ることのできない僕達は、生きていても・・・無駄かもしれないって・・・時々想うんだ。・・・こういうこと仲間内で言うのはタブーかもしれないけど」

少しずつ途切れていく言葉に込められたピュンマの壮絶な心の痛みに、ジェロニモは言葉を失った。
・・・それはピュンマが発した言葉ではあるけれども、本当は自分自身の苦悩そのものを言い当てていたから。
古来から大切に受け継がれてきた、先祖の教えに反するような今の自分の存在は、大自然の営みとともにその偉大な恩恵を受けながら育ってきたジェロニモにとって欺瞞に他ならなかった。

自然に逆らってこの世に生きている人工物の自分は・・・
人類のために戦うという大義名分に隠れて、自然を破壊するだけの機械に他ならないはずだから・・・

「・・・こんなこと言う僕を見損なったろ?」

引き攣った顔で口元にぎこちない笑みを浮かべるピュンマの瞳は、ひび割れた己の心を映し出しているように
光の色を失いつつあった。
自分の存在意義を否定しながらも、否応なしに『正義』という大義名分を掲げた戦いに挑まなければならない、
中途半端なジレンマが・・・追い払っても追い払ってもしつこく付き纏う。

・・・一切合財かなぐり捨てて、逃げてしまえば楽になれるのかもしれなかった・・・

・・・だけど・・・自分は歩き始めてしまったから・・・

・・・自分自身では決め兼ねていた道を・・・

・・・仲間達と初めて出会ったあの瞬間に・・・

・・・これから待ち受ける数々の苦難や試練を、共に支えあいながら生き抜いてく決意を確信したのは・・・

・・・紛れもない自分自身だったから・・・

「・・・ピュンマ、お前はもう分かっているはずだ。・・・自分がどうすればいいのかを・・・」

ポツリポツリと呟いた言葉の中に秘められた真実の翼が、今、羽ばたき出す。
心を覆う靄の向こうに晴れ渡った空を目指し、飛び立つ無垢な願い。

ハッとした顔で自分を見つめ返すピュンマに、ジェロニモは一回だけ力強く頷いた。
戦闘前の緊張感で震える自分自身の指先を・・・今は優しい気持ちで思い返しながら。

「・・・俺達は・・・生きていくんだ!」

遥か遠くに待ち受ける未来が一瞬だけ微笑み返した錯覚を感じながら・・・
ジェロニモはぎゅっと拳を握り締めた。
手のひらの中に、あの日の思いを永遠にに閉じ込めつつ・・・

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