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涙腺の故障 〜字書きの為の50音のお題〜

2005年2月28日 サイト初掲載作品
(一つ前にUPしてある、『珍しい出来事』の続編となります)

足底から冷えあがってくる寒さは、想像以上に身体の温かさを奪い取っていく。
降り頻る大雪の中、なんとか辿り着いた駐車場には雪に埋もれたまま身動きが取れない車の行列がびっしりと並んでいた。

彼女をこのまま寒い中で立たせていくわけにはいかない・・・!

握り締めたままの彼女の左手に精一杯の温もりを自身の右手から伝えながら、島は手探りでダッフルコートのポケットから車のキーを探し当てた。
大体ここら辺だろうと見当をつけてキーレスエントリーのスイッチを押すと、降り積もった雪で見分けがつかない車列の中から一台だけ、「ここにいるよ」と指し示しているかのように、ヘッドライトが数回点滅した。

「もう少しだから・・・頑張って」
「・・・はい」

自身の手を握り返す彼女の左手には、自分に対しての深い信頼が込められている、しなやかで力強い反応があった。
スエードの短いブーツを履いたまま、この大雪の中を一緒に駐車場まで歩いてきた彼女の足元は濡れてしまって相当に冷え切っているはず・・・との予測が心を蔽い尽くした途端、胸の奥が切り刻まれるような深い痛みを感じた。
スニーカーを履いている自身の足が温度の感覚を失くすほど、かなり冷え切って痛い状態であるから、彼女の足の冷たさと痛みは推して知るべきで。

早くなんとかしなければ・・・!

胸の奥からの思いに衝き動かされるようにして、動き出す身体は意識の範疇を超えていた。

大急ぎで助手席のドアの上に降り積もった雪を手で掃き捨てると、すぐさま彼女を助手席に座らせてシートを目一杯後ろまで引いた。
その間にキーを差し込んでエンジンを掛け、すかさず暖房を最大の風圧にセットして、温風を冷え切った車内の隅々まで行き渡らせる手筈を整えた。
ダッシュボード付近から勢いよく送風されていく温風は、彼女の豊かなブロンドをふわーっと車内に広げさせる。

その一連の動作を行いながらも、島の心は雪で濡れてビショビショのテレサの足元にずっと神経が集中していた。
まだ降り頻る雪の中、ダッフルコートを脱いで助手席に座っているテレサの膝元を包むと、島は巻いていたマフラーをすっと取り外しながら、同時にテレサの濡れたブーツに手を掛けた。

「・・・島さん!・・・何をなさるおつもりなんですか?」

自身のいきなりの行動に困惑して小さい叫びを漏らすテレサを黙って見つめた後、島はありったけの想いを込めた笑顔を彼女に向けて零した。
そして自身の身体はセーター一枚のままで車外に置き去りにしたまま、テレサの足元に屈みこんで濡れたブーツをそっと取り外すと、彼女の素足をマフラーで大切に・・・大切に包みこんだ。

「・・・足、冷たかっただろ?・・・長い時間、君に寒い思いをさせてしまって・・・ゴメン」

ハッとして身を硬くするテレサは悲鳴にも似た響きの声を放ちながら、自分の足をマフラーで包みこんでいる島の行動を止めさせようと抵抗を始めた。

「やめて・・・!やめてください、島さん!!!御願いですから・・・!」

自身の身を思い遣って必死に抵抗するテレサを柔らかく受け止めながら、島は冷たさの残るテレサの両足をマフラーごと己の胸の中にしっかりと包み込んで離さずにいた。
・・・そう、自分の身体に残っているありったけの温もりを、すべて残らずテレサの足元に伝えるように・・・。

「・・・テレサ。僕の任務のせいで、いつも寂しい想いを君一人に背負わせてしまって本当にゴメン。君と僕がこうして二人きりでいられる大切な時間はほんの少ししかないから・・・せめて・・・せめて今だけは・・・僕のワガママを・・・君に聞き入れて欲しい」

自身の言葉を聞きながら涙腺が故障したかのように、啜り泣き続けるテレサを愛しく見つめながら・・・
島は胸の中にあるマフラーで包みこんだテレサの両足を大切に抱え込んで、そっと呪文を唱えた。


「・・・君の足が・・・早く温もりを取り戻しますように・・・」

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