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言いそびれた言葉達

2009年4月23日 新作です
(昨日UPした『大丈夫なんて嘘』の続編となります)

『大丈夫です。どうぞ私の事は心配なさらないで、お仕事に集中なさって下さい』


言い終えた後、少しだけ顔が歪むのを私は自覚していた。
条件反射で発した言葉の隅っこで、言いようのない哀しみが影を落とす。
咄嗟に言葉を紡ぐことで、島さんに心配を掛けさせないように、本心は幾らでも誤魔化しきれるけれど・・・・・・
嘘偽りない本当の気持ちは、隠そうとすればするほどに、言葉尻に微妙な余韻を残していた。
電話越しの対話という、いわばお互いの姿が見えない状態での会話は、却って心の奥深くに仕舞い込んだ本当の気持ちを、思いがけず露出させてしまうものであったと、後で気付く。

動揺した心が乗り移ったかのように、微かに震え続ける言葉の調べ。
これ以上島さんと話していたら、懸命に捩じ伏せた心が一気に暴走してしまいそうな予感が私を襲う。


「御連絡ありがとうございました。お仕事の邪魔になってしまうので、一旦電話を切りますね、島さん」


かろうじて言い繕った言葉が、滑らかに唇から放たれていく。
多少早口ではあったけれど、島さんに心配掛けまい一心で紡ぎだされた言葉に対して、島さんは電話の向こうで、穏やかな声を私に届けてくれた。


「テレサ、ありがとう。もうすぐ君の元へ帰るから!」


プツッと切れた音を確認した途端、全身から力が抜け落ちていく。
膝がガクガクと震えだし始めて、その場に立っていられなくなる程の虚脱感に襲われた私は、壁に身体を預けたたまま、ズルズルと床に座り込んだ。
壁と身体に挟まれて行き場を失った髪が、体中を隈なく覆い尽くす。
胸の奥深くに仕舞い込んだままだった心が、我慢の限界を超えて全身から次から次へと溢れ出して行く。
行き場を失った心が逃げ場を求めて行き着く先は・・・・・・過ぎ行く時間さえも瞬く間に凍りつく、空虚の狭間

 

本当は大丈夫じゃないって、自分自身が一番よく分かってる・・・・・・

 

だから尚更、島さんに私の事で心配を掛けさせてはいけない。

島さんがいつも安心できるように、そしていつも笑顔でいられるように。

島さんが私の事で余計な気苦労をしてほしくないから・・・・・・

私は自らの心に決意の楔を打ち込んで、封印をする。

 

『逢いたい。今すぐ島さんに逢いたいです・・・』

 

言いそびれた言葉達が、心に楔を打ち込んだ瞬間に粉々に砕け散る。

砕け散った欠片が、哀しみの雫となって部屋に降り注ぐ。

静かに降り注ぐ透明な雫の中に映りこんでいるのは、

島さんの穏やかで優しい微笑み、ただそれだけだった。

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