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小噺もどき:バレンタインネタ2011

※2月11日追加分更新/御話完結
こんばんは。
今日から12日にかけて広範囲で降雪になりそうですね。
願わくば各地が大雪にならないよう祈るばかりです。

季節的な話で小噺もどきをUPしました。
何だかいつにも増して、テレサが天然かもしれませんが(汗)よろしかったらどうぞ。

※でもきっとオチは皆さんが予想されるような展開になるのではないかと想います(笑)

「おい、笑い過ぎだぞ!?いいかげんにしろよ、古代ッ!」

まだ笑いが治まらず、鳩尾の辺りをありったけの力を込めて握り締めている古代の拳がプルプルと小刻みに震える。
目尻に薄っすらと涙を溜めたまま必死に笑いを堪えているような旧友を一瞥し、島大介は冷め掛けたコーヒーを一気に飲み干す。
僅かに口内に残った苦味を強引に喉奥へと押し込んで、島はソーサーの上に微かな音を立ててカップを無造作に置いた。
ガチャリという耳障りな音が、部屋の空気を険悪なものに変えていきそうになるのを敏感に察して、古代はようやく落ち着きを取り戻した。

「すまん、島!確かに笑い過ぎたようだ。・・・・・・だが、これだけは言わせてくれ!」

油断していると、つい口の端から漏れ落ちそうになる笑いを押し殺して、古代はゆっくりとした口調で言葉を紡ぐ。

「お前もテレサも・・・・・・融通が利かなくて頑固なところはそっくりだよな!」

言葉の表面だけ受け取れば、かなり歪んだ褒め方に他ならないが、島はそれが普段は口煩い親友の、彼独特の照れ臭さと優しさが滲んだ言葉であると認識していた。
ぶっきらぼうでストレートな言い回しそのままの、下手すれば相手に誤解を与えかねない言い方ではあるが、それが古代独特の優しさであると島は知っていた。

「・・・・・悔しいが、お前の言う通りかもな」

苦笑いを零しつつ、少し視線を落とす島の姿を認めて、古代の口にも柔らかな笑みが浮かぶ。

「お前宛に届いたバレンタインのチョコレート、本来だったら実家宛に届くはずなのに、何故か新居に転送されちまって、それを見つけちまったんだよな、テレサは・・・・・」

「いつもは実家宛に届いたチョコレートは全部、近くの児童養護施設に名を伏せて贈っていたんだ。今回もそうしようと思ってテレサにその話をしたら・・・・・いきなり懇願されたんだよ。『皆さんからの、島さんへの想いがいっぱい詰まったチョコレート、このまま島さんに食べられないまま、施設へと送られてしまうのは何だか切ないです』ってさ」

テレサの思い詰めたような、あの蒼い瞳が脳裏を過ぎった瞬間、島の心が訳もなく熱くなる。
潤んだ瞳はただ一心に自分を見つめていた。
贈られたチョコレートの中には、明らかに義理チョコと思われる物も何点か混ざっているはずなのに、それらを全部ひっくるめて自分への想いが詰まったチョコレートであるから、尚更このまま見過ごす事は出来ないと思い至った彼女の心が痛いほど分かる。

「想像できるよ。そう懇願せずにはいられなかった、テレサの必死な表情が」

飲み掛けのコーヒーを口にしながら呟く古代の顔に、柔和な表情が広がっていく。
ゆったりとした時間が過ぎていくのを心の奥で感じ取りながら、島もまた話を続ける。

「何とか宥めようと想ったんだが、頑として自分の主張を譲らないんだ。いつもは『島さんがそう思っていらっしゃるのなら』ってあっさり引き下がる彼女なんだが、今回だけはどうしても首を縦に振らない」

「それだけ彼女も、強い思いがあった訳だ」

「きっと俺にチョコレートを贈ってくれた女の子達の気持ちに、自分の気持を重ね合わせていたのかもしれないな」

あの時、胸の手前で指を組み合わせ、必死に訴える顔に浮かぶ切実な思いに嘘はなかったはず。
テレサの真摯な思いに自分は戸惑うだけだしかなかったと、島は振り返る。
軽い気持ちで放つ言葉が、もしかしたら彼女を傷付ける恐れがあったからだ。

「テレサなら大いに有り得る話だよな」

納得したような顔でうんうんと頷く古代を目の前にして、島もまた素直な気持を言葉に載せていく。

「どうしようかと思案している時、突然彼女は自分が作って俺に渡す筈だったチョコレートの包装をいきなり解き始めたんだ」

「・・・・・女って、時々突然俺たちが想いも寄らない突飛な行動を起こすよな。その時のお前の気持、俺にはよく分かる」

古代の脳裏に浮かんでいる筈の、彼の恋人の顔を思い描いて、島もクスリと小さい笑いを零す。
何度かそのとばっちりが、こっちに廻ってきたかつての状況を思い出したからだ。
男ってのはおかしなもので、そういう場面に出くわした時は、大抵同じリアクションを起こすものらしいと、お互いの口振りで理解し合う。
そして結局は振り回されながらも、落ち着くところに落ち着くのも、ありがちなパターンで。

「『何をするんだ、テレサっ!』って問い掛ける俺に対して、彼女は俺を見据えてこう言い放ったんだ」

ゴクリと唾を呑み込んで、その先の台詞を促がす古代の眼が見開く。
ちょっとした緊張感が二人を包み込み、周囲のざわついた空気が事の成り行きを見守る様に、その瞬間だけ沈静化した。

「『島さんがこのチョコレート達を受取っていただけないのなら、島さんにお渡しする為に作ったこのチョコレートと、いただいたチョコレートを一緒に溶かして、もう一度作り直したら・・・・・・せめて一口だけでも召し上がっていただけますか?』って」

黙って聞いていた古代の顔が一瞬呆けたように固まると、次に少しずつ歪みながら顔中に満面の笑みが広がり始めた。
それにつられて、島の顔も次第に緩んでいく。

「いかにもテレサが思いつきそうな考えだ!後はお前が説明しなくても、俺はその後の光景がありありと眼に浮かぶよ」

古代の発言に、島もすかさず食いつく。

「ほぅ!じゃぁ、お前が想像したその後を、俺の目の前で言ってみろよ!」

島の挑発に古代も乗り気になり、わざとらしくコホンと小さく咳払いをすると切り出し始めた。

「その後、貰ったチョコレートを一つ残らず砕きながら溶かし、その中にテレサのチョコレートも加えて、一晩掛けてチョコレートを作り直した。そしてお前が食べる分と児童養護施設へと送る分とに分けて再度固めて、新生チョコレートの出来上がり!って訳だ。どうだ!?俺の推測、間違ってるか?」

熱のこもった口調で一気に捲くし立てた古代に対し、島は観念しきったようにぽつりと一言漏らす。

「お前、その現場に居合わせたわけでもないのに、どうしてそんなに克明に分かるんだ?」

少し不服を滲ませたように、眉を顰めながら吐き捨てる島の胸元に拳で軽く突きを入れながら、あっけらかんと古代は斬り捨てる。

「伊達にお前とは長い付き合いじゃないからな。・・・・・・それに・・・・・・」

もったいぶったような感じで最後の言葉を漏らすのを止めた古代を島がせっつく。

「おい!もったいぶらないで、最後まで話せよ!気になるじゃないか!」

島の少し慌てたような態度を見ながら、古代はこの日最後の島に対しての爆弾をしれっと落すのだった。
顔に満面の笑みを浮べつつ。

「お前の額と顎の部分に出来たニキビが、何よりもその事実を物語ってくれてるじゃないか!きっと一緒に作りながら、チョコレートの味見をたくさんしたんだろ!?・・・・・・お前、知ってるか?額と顎に出来たニキビは想い・想われニキビって呼ばれて、相思相愛の証なんだぜ!?」

自分が放った言葉を聞きながら、一瞬にして硬直したような島を見据え、古代は悪戯っ子のような微笑を浮かべながら、呆然としている親友の肩をポンポンと叩きつつ、颯爽と席を立つのだった。

「・・・・・・今日の支払いは俺が済ませておくから、お前はさっさとテレサの元に帰ってやれよ!今まで散々俺と雪はお前に世話になったから、これくらいはお返ししないとな!今度は4人で仲良く飯食いに行こうぜ!」

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