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心の灯火

島&テレサ生存版の超短編です。

こちらのブログでのお話の更新は、おそらくこれが今年最後の話になるかと想います。

※twitterは盆正月関係なく呟いてます(笑)

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暮れゆく年の瀬を彩る星空の瞬き。
幾多の星に埋め尽くされた漆黒の空は、凛とした冷たい空気を縫うようにしながら、厳かな小夜曲を奏ではじめる。
星々の瞬きと共に暗闇をほんの少しだけ溶かす、小さく丸い白い吐息の塊が零れ落ちる。


共に此処に在るという、ただそれだけの些細な幸せの意味に気付いた時から、互いの心が少しずつ近づいて来て。


行きつ戻りつを繰り返しながら、ようやくお互いのすぐ傍まで辿り着いた心の軌跡が、今一際鮮やかに胸を埋め尽くしていく。


言葉に想いを載せた瞬間、目の前から一気に姿を消えてしまう怖れはまだ消せない。
それは一度ならず二度までも、ちっぽけな自分の為に全身全霊を掛けて命を賭したテレサの気持が痛いほど伝わってくるから。
そしてその真摯な想いに、自分が真正面から堪えられるような男であるはずがないという、屈折した想いが未だ自分の中に蔓延っているせいでもあった。


君の想いに応えられる男なのか?

君の穢れない愛を受け止められる器があるのか?

そして何よりも、君の隣にいる資格を有しているのか?


堂々巡りの想いは、君の一言によって終止符を打たれた。


「ずっと夢見てました。島さんとこうして星空を眺めることを」


神秘的な色を宿した蒼緑の玉が煌く星の瞬きを写し込みながら、やがて俺の眸を捉えた。

白い頬が冷気に曝されて、ほんの僅かピンク色に頬を染めた君が小さく・・・・・・小さく笑う。


答えを出せぬまま、逃げ切ることを目論んだ負の気持が、君を見た瞬間に粉々に砕け散った。
暗闇に飛び散る心の欠片は、微かな星の光に照らし出されて、夜空を一瞬だけ焦がすと、そのまま地に落ちて闇と同化した。

その行方を見定めていた心にいつしか灯り始めた、小さな灯火が全身を緩やかに暖めていく。
無意識に動かした手は君の頬に辿り着き、冷え切った頬をゆっくり包み込むと自らの掌を通して、心の内から零れ落ちる温かな想いを伝わらせていく。


そう、この温もりは・・・・・・君が僕の心に灯してくれた、温かくて優しい心の灯火


驚いたように上目遣いで僕を見上げる君の眸には、僕の姿だけしか映りこんでいなくて。


「夢見るのは今夜で終りにしよう。明日からはいつもずっと、君の傍に・・・・・・」


言い掛けた言葉の先を遮るように、夜空を駆け抜ける流れ星。
その光跡に願いを乗せて、僕と君の想いがようやくひとつに重なった。

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